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2025年07月01日
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迷っています

2009年03月29日
竹谷先輩関係のお話。
導入を書きましたが、迷っています。
このまま続けていいのかな。

採用するかしないか、思案中ですが、あげてみます。

「翳日の午後」




 
――先輩、竹谷八左ヱ門先輩。
先輩は僕らに沢山のことを教えてくれた。
面倒で、たいへんで、休めなくて。
気持ち悪いこと、危ないことだって多い委員会の仕事に辟易してばかりだった最初の頃の僕達を少しずつ変えてくれたのは、竹谷先輩だった――
 
春。
深い眠り、あるいは卵や蛹に隠れ厳しい冬を乗り越えた生き物たちが、溢れるように次々と目覚めるにつれ、生物委員の忙しさは増し増して、果てには殆ど戦争だった。
季節が夏へと向かう中、天井知らずの成長を見せる虫たちの世話に明け暮れるばかりの放課後、飼育箱の蓋をしめ、虎若はふうとため息をついた。
「どうした?虎若」
桑に散った雨露を拭う手を止めずに、八左ヱ門はちらりと傍らの後輩を見やった。
生薬にもなる蚕の世話は、生物委員毎年恒例の大仕事だ。
露がついたままの葉では病気が出やすいし、かよわい蚕が腹を壊す。
だから、雨上がりはいちいちこうして葉の裏表を拭ってやらねばならぬ手間までかかる。
しかし、八左ヱ門はその面倒を鼻歌交じりにこなしていく。
手元を見る目さえ細めて楽しげだ。
それは素晴らしいことだが、委員の仕事に辟易している虎若にとり、そんな八左ヱ門はまるで異邦人のように思える。
正直なところ、早くこんなことを終らせて、火縄銃の練習や日課の鍛錬をしたかった。
「先輩。生物委員の仕事って、大変じゃないですか」
唇を尖らせ、虎若がとうとう呟いた一言には、しかし意外な相槌が帰ってきた。
「面倒くさいよな、やっぱり」
「それじゃあ・・・、どうしてそんなに楽しそうなんですか?」
微風にのり、桑の葉の甘いような香が、ふと鼻に通う。
みれば、八左ヱ門の丁寧に拭ったみずみずしい桑の一枝に、蚕が八の字に糸を吐きながら歩み寄るところだった。
嬉しげに、ひくひくと頭を動かしながら、ご馳走の匂いを嗅いでいる。
その様子をじっと見守っていた眼差しを、虎若にうつし、八左ヱ門はにっと笑った。
「そうだなあ、俺は、やっぱり生き物を飼うっていうのはエゴなんだと思うんだよな」
「エゴ?」
「自分勝手ってことだ」
「ちゃんと世話してやっていても、ですか?」
「そうだ」
……ぱりぱりぱりぱり…。
ひとつ、ふたつ。
語る八左ヱ門の声に蚕が小さく桑の葉を食む音が重なっていく。
「こいつらが自然にいれば、きっと行きたいところに行って、食べたいもん食べて、好きな相手見つけて卵産んだり・・・鳥に見つかって喰われんのも、自由なんだよな」
ふとした沈黙にも、蚕のたてる音は止まない。
せわしないような、それでいて密やかな、耳に馴染んだ不思議な音楽だ。
「俺達はそれをすべて、奪っているわけだ」
つられるように、虎若も改めて蚕に目をやった。
小さな脚で葉をしっかりと支え、みるみるうちに緑の葉をたいらげてゆく、一途な白いからだ。
これだけたっぷりとやっておいても、夜までには丸坊主になった枝を、喰いたりない風で彷徨い始めるのだろう。
喰いっぷりがよいのは清々しいが、ここのところ、虎若はその食欲の旺盛すぎることに、うんざりとしていた。
「例えば蚕。こんなに喰うなよって思うよな?」
だから、眉を下げて笑いながら言った八左ヱ門の言葉に、自然、素直に頷いた。
「こいつらはな、生き方にメリハリをつけてるんだ。」
ひたすら食べる時期、変身するための眠りの時期、そして相手を見つけて子供を残すための時期と、八左ヱ門は言う。
「今は喰う時期だから、喰うことこそがこいつらの人生…いや虫生かな?だから目一杯食わせてやらねば死んでしまう。肉食のやつらはいつ餌が入るか解らんから、腹持ちがいいだろ・・あー、性成熟の時期は別な。」
そのサイクルと、四季を巧みに合わせているのだという。
まあ、作戦だな、と、八左ヱ門は言った。
聞いて納得の虎若だったが、反面空恐ろしいような気持ちにもなった。
自分は蚕のように食べ続けていてはきっと死んでしまうし、かと言って一食抜いただけでもお腹が空いて仕方ない。
生きようとする彼らの凄まじい、本気が伝わってくる。
「なんか、凄いですね」
「すげえだろ」
ニッと笑って八左ヱ門はゆるく腕組をした。
「俺には正直、虫どもの気持ちは解らん。生き物だろうが難だろうが、出きる物は利用するのが忍者だから飼うことは、いい。」
時に、その命を奪うことすら。
あとに続けるはずの言葉を、八左ヱ門が意図して飲み込んだことに、虎若は気付かなかった。
代わりに八左ヱ門は、後輩の円らな瞳をまっすぐに見つめて揺ぎ無く言った。
「でも自由にさせてやれない分、生き様をちゃんとわかって、きっちり世話してやろうな。」
「はい!」
元気よく背筋を伸ばした虎若ににっかりと笑って、隣の飼育箱を覗く。
底砂から、そっと反(かえ)した住処の下に、先日やった羽虫の残骸が散らばっていた。
その奥で、蠍のジュンイチは毒針を僅かに持ち上げた。
刺激せぬよう、菜箸で一つずつ、食べ残しを拾っては捨てる。
(命あるものに出来ることをつくす、その習いを身に浸みこませるだけで、いつか一線を引かねばならぬそのときに、初めて迷いを捨てられる。)
いつかは、彼らも。
物思うどこか真剣な八左ヱ門の横顔を、虎若は頼もしく見上げた。
 
そんな、初夏の放課後もあった。
 
――そんな、八左ヱ門先輩が、あんなことになってしまうなんて――





************

だめだ、なんか暗い!
命うんぬんのとこ、削ってしまおうかな。
次々とお話が浮かぶ方が本当に羨ましい!
自分自身と、お話を切り離せないタイプのようです。
あーもう!なっとらん。
竹谷先輩のキャライメージを、色んな方に伺ってみたいです。

それはともかく、蠍と蚕を描けて満足だなあ(こらこら)


しかしなんでここ虎若なんでしょう。
無意識。
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