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2025年07月14日
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水軍の秘伝書

2009年10月30日
紹介記事が超長くなった・・・・




落乱における海の覇者、第三協栄丸さん率いる兵庫水軍が、戦国時代に実在した「村上水軍」をモデルにして描かれているということは、ご存知の通りです。
この村上水軍の持っていた技術と知識の真髄を集めた秘伝書が、現代語訳されたものがあると聞き及び、暫く前から入手したり、読んだりしておりました。
これは読みやすく大変面白い本だったのですが、残念なことに既に絶版となっているようです。
万川集海が忍者のバイブルなら、この秘伝書は海賊のバイブルと言えそうです。
今回は、その内容について少しご紹介したいと思います。
門外漢のドシロウトの書いた感想ですので、至らない辺りはどうぞご容赦ください。
私よりもずっと詳しい方がご解説下さっておられますので、是非こちら(リンク)へも!

また、この本は現在万川集海と同じく、復刊ドットコム様にて復刊リクエストが出されています。
宜しければ、是非、ご協力くださいませ!


*どんな本?*

中世に活躍した海賊衆の中でも、もっとも強大であり、優れた戦の技術を誇っていたとされる「三島村上氏」に伝えられた秘伝書を、の現代語訳版です。
原本は、江戸時代の寛政7年(1795年)に森重都由により編纂されました。
この原本は、村上氏伝来の秘術に加え、江戸時代の船の解説書の内容も含み、海の百科辞書として体系化された優れた資料でありました。
それが現代語訳されるにあたり、村上水軍の成り立ちや、時代背景についてもわかりやすく解説が加えられているため、初心者にも読みやすく、理解しやすいものとなっております。
水軍の掟、火器、船種、戦術、作法、占い、天気予報など、様々な事柄に満遍なく触れられており、その中から当時の水軍のあり方、生き様を自然と感じ取ることができます。



*落乱の元ネタ、そしてさらなる深みへ*

文中、落乱の元ネタには枚挙に暇がありません。

・「すまる」で死体を引き上げる、
・投げ焙烙
・水軍の合図について
・船を勝手に歩き回ると切腹
・合印をなくしたときの厳しい処置
・水松盾
・筌幕の法
・右舷と左舷の組は互いが危機に陥ろうと、絶対に自分の立場を死守する
・隠し付け

この他、太鼓・鐘・ほら貝などの合図も、どのような道具を使うのかなど、詳しいです。
特にほら貝について、何回目で錨をあげ、何回目で出航する、といったような合図の振り分け方は、陸上の戦のにおける合図とも共通点がありそうな気がします。
個人的に、ときの合図の「とき」を「鯨波(とき)」と書くことを初めて知ったのが衝撃でした。なんてかっこいい!
少し話はずれますが、戦のときに使う、武者言葉(所謂ギョーカイ用語?)の一覧も、かなり痺れます、一読の価値アリです。
このほか、天候の推し量り方や船の種類と各部名称など、時々イラストも交えながら詳細に解説されていました。


*水軍の生き様、武士や忍者との共通点と相違点*

例えば御頭の心構え、部下達への接し方、船戦における水夫の負う責任、水練の者の役目など、落乱本編ではちらりと垣間見えるくらいですが、その奥深さが語られます。

「頭は組子(部下)を子のように、組子は頭を親のように思って、心の離れないようにする」

という一文に、水軍の絆の深さを想い、御頭の偉大さや、海での戦闘というある種の極限状態の中で、それぞれの役職が負う、責任の重さと覚悟を思い知りました。
船中の四功をはじめ、各役職に人を配置するには、年功序列でなく、経験と精神年齢が重視されたとのことです。
船の上は実力の世界だったのですね。
そのように、彼らの生き様、心意気が透けて見える記述が秀逸で、読み物としても十分に面白いと思います。

戦の時の船の配置、首実験の作法などは武士の戦の作法と共通するものがあり、格式の高さを感じます。
この辺りも比較的詳しく記述があるので、仙蔵たち作法委員が兵庫水軍で学んだ内容を、推し量ることができそうです。
一方で、陸上の戦闘と異なる、「船上」という閉鎖空間での戦闘には、兵の隅々まで徹底された統率が求められる、甘えのなさが端々に見えました。
そして、そこには徹底された合理主義があります。
”迷信や通説に惑わされず、臨機応変に、各自が自分で考えて行動する”という考え方が各所に出て参ります。
これ、当時としては革新的だったのではないでしょうか。
そのあたりは、忍者とも共通する精神があるような気がします。

また、火気の処方が大変充実していることも印象的でした。
当時の船は木造ですから、火術を修めることが勝敗に大きく関わったであろうとことは想像に難くありません。
この火器に関する記述の詳細さは、万川集海とも共通する部分です。
火縄銃の打ち方についても、なかなか詳かったです。
玉子の殻を用いた目潰し(天狗櫟の法)は、万川集海にある目潰しとも大変よく似ているなと思いました(ただし、万川集海に記載されているものは火器であり、爆発もする)。
合図法には飛脚篝火というのがあり、これは名称も内容も、忍者の使う飛脚火にそっくりでした。
忍術との共通点は、この他にもあり、例えば「口伝」が多いところもそうだと思います。
「忍たまの友には術の肝心な部分が書かれていない」というのが落乱の原作に出てきますが、万川集海もこの本も、同様に口伝を多く含みます。


*感じられたこと*

とにかく、その技術や思想の洗練されていることに驚きました。
海賊とは、海の世界の誇り高き武士であり、海を知り尽くした土民でもあったのだと思います。
余談ですが、村上水軍、すなわち村上氏の出自には諸説あり、清和源氏もしくは村上天皇にその源流があるとも言われます。
もしそうならば、彼らには、そのような誇りも脈々と受け継がれていたのではないか、などと考えました。
そして、一歩誤れば逆巻く波に呑まれるという船上のに厳しい環境が、ある種陸上の武士よりも厳しく、洗練された水軍ならではの作法を育て、またそれを守る彼ら海賊にも、陸の掟に縛られぬ矜持があったのではないでしょうか。
などと…妄想が妄想を呼びます。
大変素晴らしい本でありました。
全体を通して大変読みやすく、解りやすくまとめてあるところも非常にポイントが高いです。
落乱を読み解く上では「万川集海」や「図解・隠し武器百科」と並ぶ、一級品の資料だと思います。
解りやすさ、丁寧さという点では、頭一つ出ているかもしれません。
読めば水軍像がより鮮やかに浮き上がり、海賊さんがもっと好きになれるこの一冊。
是非一度、お手にとってみて頂きたい一冊です。
宜しければ是非、復刊活動にもご協力を!
 
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