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焔 3
何だか、このままいると書くことを忘れてしまいそうで。
「な・ん・で!この面子で女装なんだっ!」
昼日中、砂埃の街道で、足早に先を行く仙蔵のやや小柄な背を睨みながら、留三郎は低く呻いた。
しかし、うるさそうにちらとこちら振り返った仙蔵は、ろくに顔も見ぬうちに、しゃんと背筋を伸ばして前へ向きなおってしまう。
その、美しい裾捌きと、おとがいの透き通る肌、背に流れるしなやかな黒髪。
娘姿が堂にいっているのは仙蔵だけで、どう足掻いても逞しさの隠せない留三郎は、慣れぬ・・・少なくとも久方ぶりの女装に居住まいが悪くてしかたない。
仕方なく袂をさらにしっかりとかき合せていると、仙蔵のついたわざとらしいため息が耳に通った。
「文句を言うな。大体、お前らがやれ六部や雲水だと変装するものですらいちいち揉めるからいかんのだ」
「だからって!そこらの本を適当に開いたところにあったものに変装することはないだろうが!見たか、文次郎のおぞましさを。」
留三郎のさらに遥か上を行く娘姿の似合わなさで傍らを行く文次郎にも、珍しく不平がある様子である。
「秘伝書にいわく、不自然な変装ならばしないほうがマシ、だ。」
そう言ったところで、聞こえないふりの仙蔵は、微かに肩をすくめただけだった。
それきりむっつりと黙って歩き続ける文次郎を、留三郎は横目に睨む。
「大体文次郎、お前が俺に手を貸す理由が見当たらん。とっとと吐きやがれ。何をしに来た」
「仙蔵に借りがある。」
「何だそれは」
「それに、長期任務と関わりのある件かも知れんのでな」
「・・・・」
留三郎は、その答えに無言のまま、文次郎の険しすぎる娘姿から目を逸らした。
ふと、各国をかき回している神出鬼没の幻術遣い雲黒斎の名が脳裏をよぎったが、口を一層引き結んで街道の先を見据えた。
仔細は解らずとも、共通の利益があるからこうして共闘が成り立つのであろう。
それならば、互いの任務には干渉しないのが、忍びの者の礼儀でもある。
三人はそのまま、日が傾きかけるまで黙々と街道を歩き進んだ。
やがて、薄い夕闇の向こうに、ぽつぽつと仄明かりが浮かび始める。
スッポンタケとの国境に程近い宿場町が見えてきたのだ。
とっぷりと暮れるころにようやく足を踏み入れれば、街道と打って変わった人賑やかさが、三人を飲み込んだ。
もの売りと、暖簾の影から白い手で招く傾城の甘い呼び声をすり抜けた先に、一件の宿屋があった。
****************
半端なところでごめんなさい。
今回は女装ばっかりですね。
というか、女装話を書くの、初めてです!わ!今気がつきました。おー・・・。
色々詰め込んで、たのしく。娯楽作っぽい話を目指しております。
女装、留さんはそんなに似合いませんが、うちの伊作さんもそんなに似合いません。
だって、もう20歳ですしね!
二人とも、もさもさした骨太男子です(私の趣味が全開)。
ギンギンさんは言うに及ばず。
そこんところ、仙蔵先生は違うと思うんです。
風体を書いていて楽しいのは仙蔵です。
宿場町の様子も、あんまり勉強せずに書いてしまいました。
色々、趣味丸出しであります。
繁華街とか、賑やかさに呑まれる感じが好きです。
それを出したくて。
京都の町の呼び声の盛んだったことは、本で読んだことがあります。
えーと、狂言に出てくる言い回しがなんとか・・・
遊女さんの呼び名はいろいろありますよね。
浮かれ女、遊び女、遊女、傾城、白拍子、くぐつ、辻君、立君、遊君・・・歩き巫女とか花魁とか。
時代とその場所によって、定義があったのかなあと思って調べますけど、よく解らなくて。
白拍子、歩き巫女、花魁あたりは何となくイメージがありますけれども、他がもう。
宿場なら飯盛り女がいいのかなとも思うのですが、それってもっと時代が下ってからなのかな??とか。
個人的には傾城という響きが一番好きなので、そうしてしまいましたが、それって京都の傾城屋だけだったりしないだろうかなんて不安もあります。
ましてや、お客の引き方などは本当に適当です。
交通の要所に商人が集まり、自然宿も営む。そこに身を寄せる遊君もいて、芸能民もあって、ますます賑やかになって、色々なドラマがあるんだろうなあとか。
しっかり制度がしかれる前の、未分化な宿場町ぶりをもっと、確かめられたらいっぱい書いてみたいです。