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2025年07月01日
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白妙 5

2009年02月10日
修正終りました。
シーンを書き足し、凄く長くなっています。
ここまでで、ワードに10ページになりました。
終わりが見えないです。

再び灯りの点った部屋の中、炭櫃の周りにおしあいへしあい、やっと居並ぶ11人を眺めていると、おのずと5年前の小さかった体躯が思い起こされ、留三郎は不思議な感動に包まれる心地がした。
 かたやくすくす笑いの止まらぬらしい仙蔵には、後頭にを苛立ち任せの拳固をくれてやったが、三倍にして返された。
 それはともかくも。
先ずは上座に座した二人の師に向け居住まいを正し、深々と頭を下げる
 担任とは違ったが、学年が上がるにつれ伝蔵には戦場(いくさば)を切り抜ける魂を、半助には火器と兵法の粋を教わった。
 何よりも、生きる全てを学んだあの場所での六年間を、二人は師として見守ってくれたのだ。
 
「山田先生、土井先生、ご無沙汰しております」
「うむ、頑張っとるな」
「留三郎も元気そうで何よりだ」
「・・先生方も」
 
 伝蔵と半助の何気ない一言、その声音の温かさは、長きを経ても変わらぬ師弟の絆を物語る。
 留三郎はそのことに尊敬と感謝の念を新たにする思いがした。
 ところが。
 突然の来訪の訳を尋ねようとした留三郎に、半助はのらりくらりとお茶を濁すばかりで、しまいには
 
「いやー・・・まあいいから、ともかくそちらの話を続けて続けて。」
 
 と眉尻を下げて笑った。
 あからさまに引きつったその笑顔に、悪い予感が募るばかりである。
 物言いたげな留三郎をよそに、奥に控えていた仙蔵から、状況が一同に伝えられた。
 暫ししそれに聞き入った伝蔵は、それまで固く閉ざしていた瞼をあげ、鋭い眼差しで仙蔵を見やった。
 
「仙蔵、お前は近頃のチャミダレアミタケの振る舞いに敵対する城の側だったな。」
「はい。略奪等の被害を受けた城が手を組み、チャミダレアミタケを落とそうという動きがあります。」
「いつ決起するかだが、わかるか。」
「私からの報告を待って、動く手筈になっております。そうなれば、戦は避けられません。」
 
「チャミダレアミタケが倒れれば、次に狙われるはエゴノキタケ、そしてサンコタケ、スッポンタケが争い、さらに背後にはドクタケが・・・一帯の均衡が破れることで、連鎖的に戦が起こることになる。」
 
 そうなれば、広大な焼け野原が広がり、多くの罪無き者が巻き込まれ、あるいは命さえ失うだろう・・・。
 苦い翳りを帯びた半助の呟きが、真夜中の静けさに沈み込む。
ため息すら漏れぬひと時の沈黙が、事態の深刻さを物語るようだった。
 
「俺は」
 
 腹から搾り出すようにそう言って、留三郎は燭台に揺らめく炎をぐっと睨んだ。
 静かに、しかしじりじりと灯心を舐め焦がす緋色の焔(ほむら)がその瞳の奥に燃えていた。
 
「それまでに殿と城を取り戻し、この戦が起こる前に防ぎたい」
 
 伝蔵、半助、忍たま達、そして仙蔵。
 居並ぶ者達の射る様な視線が、自ずと留三郎へ集まった。
 その全てに答えるように一人一人を強く見返し、留三郎は頭を下げた。
 
「どうか、手を貸して頂きたい」
 
 一瞬の、水打つような静けさは、瞬く間もなく綻んだ。
 やがて、ふっと場の空気が熱をはらんで緩み零れる。
 目を見交わして頷きあった、は組の忍たま達を。
ゆっくりと半身を起こす留三郎を、その背を見つめる仙蔵を。
 伝蔵、半助が目を細めて見守る。
 一同の心が、一つ所を目指して奔り始めた。
 
「あの・・・」
 
狭い部屋いっぱいに士気が渦巻き始める中、は組の座るあたりからおずおずと声がかかる。
見れば、六年連続学級委員長職を務め続け、今は委員会の長も務める、庄左衛門が遠慮がちに手を挙げていた。
 
「・・・あの、行方のわからない本物の殿様ですが・・本当にまだご存命なのでしょうか?」
「庄ちゃんたら相変わらず」
「怖いくらい冷静ねっ。」
 
 最早恒例とも言える乱太郎ときり丸の掛け合いを傍目に、留三郎は腕組みをして、頷いた。
 
「最悪の筋書きが、それだ。だがおかしいとは思わないか。暗殺の方が数段楽なところを、わざわざ摩り替えたのは何故だ。この城の乗っ取りが目的なら、それを危機に陥れるのは何故だ。しかも、だ。」
 
 剣術指南役であった灰洲井溝は城を去り際に、密かに留三郎を訪ねてきたという。
 その夜、灰洲井溝が留三郎の手の中に残した結び文。
 中には、この度の出来事、スッポンタケとの関わりはなしと記されていたという。
 それの意味するところとは、何か。
 
「解らんが、何にせよ、スッポンタケが首謀とすれば、あまりに動きがなさすぎる。どうも、気になる。」
「それは私も感じていた。・・確かに読めぬな。何が狙いだ。」
 
 口元にそっと拳をやった仙蔵の呟きに、留三郎は今一度頷いて、
 
「不気味だが、そんな相手だ。死んでいる可能性と同じくらい、いやそれ以上に生かされている可能性もある。少なくとも、俺はそう思いたい。」
 
 そう言った留三郎の目がふと遠くを見つめる。
 二年前、城つきになったばかりの留三郎を、武術好きの茶乱網武は格別にとりたててくれた。
 度々城の危機を救ってきた忍術学園の縁(ゆかり)もあったのだろうが、留三郎の得意武器を珍しがり、直接お声をかけてくださったことは二度や三度ではない。
 それだけでなく、戦に長け、家臣を良くまとめ、懐の深いところのある優れた殿様であった茶乱網武を、ひいてはこの城を。
 留三郎は何としてでも救いたかった。
 平和を願い、悪しきを挫く。
 その心意気に、乱太郎達は組の面々も変わりは無い。
 
「確かに俺たちも随分ここの殿さんの世話したもんなっ。」
「こらこらきり丸・・」
「よおーし!皆で頑張って城をとりもどそー!」
「おー!」
 
 乱太郎の高く振り上げた拳に、十の拳が呼応する。
 大いに盛り上がるは組を一瞥し、すっと身を寄せて来た仙蔵が留三郎に耳打ちした。
 
「おい、こんなに大騒ぎして平気なのか?」
「ああ。今夜、近所と忍び組の連中には軽く眠り薬を盛ってある。」
「お前・・それで旅支度か。一人で殿様を探す腹だったな。」
 
呆れ顔の仙蔵に図星を突かれ、留三郎は思わずそろりと視線をそらす。
しかし目線をよそにやった先、やる気十分のは組を前にした半助の嬉々とした言い草に、留三郎は耳を疑った。
 
「そうか、お前たちがそんなにやる気になってくれるとはなあ。先生は嬉しいぞ。折角だから、これをお前達の卒業試験としようかと思う!」
 
 は組から抗議の声が上がるよりも何より先に、留三郎は思わず腰を浮かせた。
 
「ちょっと、ちょっとお待ち下さい土井先生!!!」
「私は構わんぞ、願ったり叶ったりとはこの事。」
「俺は構う!」
 
 しれっと言い放つ仙蔵に振り向いて怒鳴った留三郎だったが、それもこれも見ないふりの伝蔵は、更なる追い討ちをかけ始め。
 
「そういう訳だから、お前達が中心となり城奪還の作戦をたてること。丁度いいからまあ、先輩方もうまくコマのように使ってだな・・」
「山田先生まで!」
「往生際が悪いぞ留三郎。」
「てっめえ、謀りやがったな・・」
「人聞きの悪いことを言うな」

 乱暴に胸倉を掴まれても、仙蔵は飄々とした態度を崩さぬまま、ひらひらと手を振るばかりである。
 方や、実戦ごとき日常茶飯事と見えるは組の面々は、既に作戦会議の趣で円陣を組んでいた。
 
「よおーし庄左衛門、作戦立ててくれ」
「うん、大体考えてあるんだけど・・・留三郎先輩、教えていただきたいことがあるのですが」
 
襟を掴みあげられたままの仙蔵は、それを聞いて軽く笑うと、留三郎を上目に見ながら上機嫌に顎をしゃくった。
 
「行け、留三郎先輩」
「っ・・・お・ぼ・え・て・ろ・よ」
 
一言一言区切るように吐き捨て、ぐいと親指を突きつけて行った留三郎にもう辛抱たまらずに、仙蔵はころころと笑い転げた。
 
「あの、この城の見取り図とかありますか?」
「ああ、それならここに・・・・っておい、そうだ、話は終ってなかったんだった、・・幻術遣いの正体だがなあ、恐らくは」
 
 ばりばりと頭をかきながら言いかけて、留三郎ははっと上を仰ぐ。
 喧騒に気を取られて気付くのが遅れたが、直上に、何者かの気配。
 身構えようとした途端、屋根の曾木板が一枚、かぱりと外れ、覗いた濃い宵闇から沸くように、声が降った。

「幻術遣いの正体、摂津院 雲黒斎だな」
「・・この声は・・!」

無言のままするりと屋根板の隙間を抜け、とんと板の間に降り立った広い背に、仙蔵が静かな声を投げた。
 
「遅かったな」
「おう。」

 振り向きもせずに短く応え、降りてきた男はすぐさま立ち上がった。
 その面(おもて)は覆面に包まれているが、剣呑に光る目の下に年季の入った黒い隈。
 覚えがあるどころではない。
 そして、留三郎とあまり変わらぬか、僅かに低いこの身丈。
 深まる確信に、小さく息を呑んだ。
 
「おい、ヘタレの留三郎、この城どうなっていやがる!」

 しかし、覆面を下ろすや否や挨拶も抜きに怒鳴りつけられ、条件反射と言っても良い速さで、滾り易い脳裏が朱に染まった。
 
「っ・・なんだと貴様、何用でウチの領内に入り込みやがった!」

 そこから先は売り言葉に買い言葉。 
 気付けば、大人気なく髷やら髪やらを掴みあっていることに、留三郎はああ、これが文次郎であり、自分であったと心の奥底で苦笑した。
 それでも、懐かしさよりやはり腹立ちが勝り。
 仙蔵による鉄拳仲裁が下されるまで、思う存分、掴みあっては罵り合った。
 学園縁の面々の呆れ見守る中、それはまさに、数年ぶりの殺伐とした景色であった。


*************************

ああ、もうカオスすぎる。
いつかまた書き直そう。
なにげに文次郎初書きです。
もっとかっこよく書きたい!
それにしても留さんと文次郎仲良しすぎますね。
楽しそうに喧嘩しています。
文次郎は留さんとは方向性の違う、男前に・・・書けたらいいな!
がんばります。


とりあえず、序章はこれで幕となります。
長々と、ありがとう御座いました。
続きは、破となりますが、資料集めが待っております(泣)
しばしお待ち下さい。




 
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