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2025年07月03日
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人として
2008年11月09日
私が勝手に思っていることです。
忍者だって、人だもの。
忍者だって、人だもの。
火気厳禁の図書室の中はいつ訪れてもほの暗く、格子窓からの静かな外明かりだけがずらり並んだ書の背を浮かび上がらせていた。
一歩、足を踏み入れると、鼻腔をくすぐる、独特のこの匂い。
それが黄ばんだ紙のものなのか、乾ききった糊なのか、はたして年月という形無きものが醸す何かなのか、乱太郎にはわからない。
保健委員定期勉強会の後片付けは、通常伊作一人で行っているのだが、今回は些か資料が多すぎた。
慣れぬ勉強のし過ぎでくらくらしていたところなのに、二つ返事でお手伝いを引き受けてしまう乱太郎のお人よしは、相変わらずである。
乱太郎は、両手に一杯の巻物を抱え、やはり本の一山を腕に支えた伊作のあとに続いて書棚の間を抜けると、そっと息を詰めた。
火気厳禁に加えて、私語厳禁。
そうでなければ、図書室の主である長次の縄標がいつ飛ぶか解らない。
書物をすべて元の位置に戻し終えるや否や、緊張感に押し出されるようにして廊下へと飛び出した。
そこから見渡せる明るい初夏の庭にほっとして背伸びをしていると、やはり重い荷から開放されて肩を回しならす伊作と目が合った。
「お疲れ様、今日は思ったより長引いてしまったね」
「はい。でも、勉強になりました。忍術学園のもってる資料って、凄いんですね。」
「そうだよ。唐渡りのものから南蛮渡来の書まで。ここでなければ見られないものも沢山ある。流石は忍者の学校だよね」
「忍者の・・・」
伊作がどこか誇らしげに口にした「忍者」という言葉に、乱太郎は、ふと午後の授業で習ったことを思い起こした。
きっと自分が覚えているよりも繰り返し、土井先生が黒板に書いてきた文字。
その示す内容はそれはもう飽きるほど教えられてきたけれど、そのたびに心のどこかで引っかかり、遠い将来に小さな不安が渦を巻く。
少し気恥ずかしいせいで、誰にも聞けなかった、そのこと。
「どうした、乱太郎」
「あの、私、ずっと疑問に思ってることがあるんです」
躊躇いがちに、けれども真摯にを見上げてくる眼差しを、伊作は柔らい笑みで受け止めながら、無言で先を促した。
************
あたりまえのことかもしれないけれど。
続きます。
結局また伊作かよ!という感じです。
とほほ。
一歩、足を踏み入れると、鼻腔をくすぐる、独特のこの匂い。
それが黄ばんだ紙のものなのか、乾ききった糊なのか、はたして年月という形無きものが醸す何かなのか、乱太郎にはわからない。
保健委員定期勉強会の後片付けは、通常伊作一人で行っているのだが、今回は些か資料が多すぎた。
慣れぬ勉強のし過ぎでくらくらしていたところなのに、二つ返事でお手伝いを引き受けてしまう乱太郎のお人よしは、相変わらずである。
乱太郎は、両手に一杯の巻物を抱え、やはり本の一山を腕に支えた伊作のあとに続いて書棚の間を抜けると、そっと息を詰めた。
火気厳禁に加えて、私語厳禁。
そうでなければ、図書室の主である長次の縄標がいつ飛ぶか解らない。
書物をすべて元の位置に戻し終えるや否や、緊張感に押し出されるようにして廊下へと飛び出した。
そこから見渡せる明るい初夏の庭にほっとして背伸びをしていると、やはり重い荷から開放されて肩を回しならす伊作と目が合った。
「お疲れ様、今日は思ったより長引いてしまったね」
「はい。でも、勉強になりました。忍術学園のもってる資料って、凄いんですね。」
「そうだよ。唐渡りのものから南蛮渡来の書まで。ここでなければ見られないものも沢山ある。流石は忍者の学校だよね」
「忍者の・・・」
伊作がどこか誇らしげに口にした「忍者」という言葉に、乱太郎は、ふと午後の授業で習ったことを思い起こした。
きっと自分が覚えているよりも繰り返し、土井先生が黒板に書いてきた文字。
その示す内容はそれはもう飽きるほど教えられてきたけれど、そのたびに心のどこかで引っかかり、遠い将来に小さな不安が渦を巻く。
少し気恥ずかしいせいで、誰にも聞けなかった、そのこと。
「どうした、乱太郎」
「あの、私、ずっと疑問に思ってることがあるんです」
躊躇いがちに、けれども真摯にを見上げてくる眼差しを、伊作は柔らい笑みで受け止めながら、無言で先を促した。
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あたりまえのことかもしれないけれど。
続きます。
結局また伊作かよ!という感じです。
とほほ。
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