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2025年07月03日
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幻冬 3

2008年11月21日
語彙が少なく、表現がお粗末でいつももどかしいです。
どうすればいいのかしら。


氷の張った土間には竈すらなく、寒さのためにひび割れた水瓶がひとつ、霜にまみれている。
その奥、二畳分ほどのごく狭い板の間で、老人が一人静かに臥せっていた。
肩と藁沓の雪をかき落とすと、伊作は老人に駆け寄った。

「御免」

上がり口に膝をつき、頚脈を探る。
体温が、低い。
そして消え入りそうな、弱い脈。
仙人のような白鬚を蓄えた、この翁が、世に聞こえた名医なのだろうか。
それならば、何故これほどまでに・・・。
いたましい思いで見下ろす伊作のまなざしを感じたのか、やがて老人はゆっくりと目を開けた。
目尻や額には無数の皺が刻まれ、痩せた頬には赤みがなく、いかにも衰弱している様子であったが、その若々しく澄んだ瞳に、伊作の心ははっと震えた。
老人はゆったりと伊作を見つめ返し、満足そうに目を細めて微笑んだ。


「おお・・・来たか」
「・・・え」
「待って・・おった・・」


老人は上掛けの下から枯れ木のような腕を伸ばし、自身の脈を確かめていた伊作の手を握った。
その胸元に、ちらりとのぞく薬袋。
(やはり、この老人が・・・)
密かに確信を深めながら、伊作は無意識のうちに、冷えた指を温めようと包み込む。
畏怖、憧れ、この状況への焦燥、そして何としてでも助けたいと逸る思いがない混ぜになり、言葉が出ない。
沈黙する伊作に、老人はどこか陽気にも聞こえる声で呟いた。


「ならば、わしはもう行ってよいということじゃな」
「・・・!」


その言葉に、伊作は全身の血が逆流するかのように感じた。
湧き上がる強い思いに突き動かされ、気がついたときには、老人の肩を強く掴んでいた。


「あなたのような方が、こんなところでお倒れになってはいけません」
「いや、いいんじゃよ」


朗らかにそう答える老人に、もどかしく顔を歪めながら、けれどもきっぱりと伊作は首を横に振る。


「山を降りましょう」


老人の顔から、穏やかな笑みがすっと消え、双眸が伊作を静かに見つめた。


「僕が、麓までお連れします」


痩せた背に腕を回して抱き起こすと、老人は僅かに乱れた息を整えながら、ぽつりと呟いた。


「麓にわしの庵がある。そこならば、薬も、道具もそろっておるぞ」
「場所は、お分かりになりますか」


懐から出された反故紙を広げると、そこには簡単な地図が記されていた。
山の中腹を少し下ったところに、赤い印。
大切にそれを自分の懐に仕舞うと、伊作は手早く支度を整えて跪き、老人を背に負った。



***************


お粗末ながらも、あげてみます(・v・)
一個目も大分直しました。
まだ、直す気満々です。
だって最初のほう、伊作だか誰だか解らなすぎですもの。
 

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