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2025年07月04日
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ゲンパロ

2009年06月23日
つづき。
これで暫く停滞します。

 
「別人なの…か…?確かに変だよな。鉄のイノシシがいるなんて、聞いたことがないし…ここはどこなんだ一体…」
「えーと、東京って…わからないよな、江戸って解るか?」
「わか…解るぞ。あの有名な静勝軒の、江戸城っていうのがあったな…え、でもそんな遠くなのか…。あ、もし初対面なのならば敬語でなくて申し訳ない、親友と瓜二つなもので…。あ、僕は善法寺伊作といいます」

伊作の喋っていることの前半部分は殆ど意味が解らなかった留三郎であったが、最後の一言により、その親友とやらが自分と偶然にも同じ名前であろうことは推測がついた。
この時ほど、彼は彼の慣れ親しんだ少年誌でお約束の異界だとかワープだとかいうシュチュエーションの存在に感謝したことはない。
心ひそかなときめきを誤魔化したくて、留三郎はひとつ咳払いをした。

「伊作、だな。わかった、俺も無礼御免とさせてもらおう。兎に角、ここは恐らくお前の住んでいた世界とは違うところだ、と思う」

説明時、人差し指をぴしりと立てる留三郎らしいその仕草に、伊作はふと懐かしさを感じたが、目の前にいるのが自分の知る親友ではないことをすぐに思い起こして、がっくりと項垂れた。

「はー…世界が…よく解らないけど凄く困ったな」

肩を落とした伊作に、留三郎は心から同情する。
はっきりとは解らないものの、サムライとかトノサマの世から突然未来都市に放り込まれたら、さぞかし心細いことであろう。
ふと気がついて周囲を見渡せば、通行人達は誰しもしゃがみこむ二人を大回りで避けるようにして流れていく。
ハイヒールのオフィスレディーが、伊作を一目見て視線をそらし、急ぎ足になるのを見送って、留三郎は、とにかく当面の問題からまずどうにかせねばならないと考えた。

「…お前、悪目立ちするな、その格好」
「確かに君とは違うようだね」
「お前、まずその頭をなんとかしろ」
「頭?どの辺りが問題なんだよ。」

首を傾げた伊作の背で、癖のある黒髪が揺れた。
座れば、引きずるほどの長さはある意味壮観だ。

「いくらなんでも長すぎだろう。しかもチョンマゲは・・・・何と言うか、無い。有り得ない。切るべきだろうな。」

あっさりとそう言った留三郎へ、伊作は思わず目をむいた。

「何だって?!」
「何だよ」
「何てことを言い出すんだ!侍ではなくとも、この年になって髷を切るなどというのは男として相当な恥なんだぞ?!勘弁してくれ!」
「あれか、スモウレスラーと一緒だな。あー・・・・。解った。じゃあしょうがない、せめて襟足のところで結ってくれ。それでも目立つと思うんだが」
「それでいいんだな、よし」
「だから!その粗末な紙切れで結ぼうとするなよ!」
「いちいちうるさいなあ。何がいけないんだよ!」
「おま、お前は紫式部か何かか!待ってろ、ゴム買ってきてやる」
「ガマをどうするって?」

留三郎は、伊作の発言に対する自分のスルー能力が否応無く上がっていくのを感じ、やれやれと立ち上がった。
歩いて5分戻ったとろに、コンビニがある。
どうせ今夜行くところもないのであろう緑のニンジャに一揃え、泊まれる道具も買ってやらねばならない。

(何のためのバイトなんだ。まあ仕方ない。えー、歯ブラシと、ゴムと…それから……)

指折り数えながら歩き始めたところで、留三郎はぴたりと足を止めた。
振り返り、胡坐で街路樹に悠然と背を預けている伊作に尋ねてみる。

「あー。つかぬ事を聞くが、…フンドシだよな?」
「それが悪いか」
「……解った」

留三郎の胸の中で、非現実がリアルな現実へと、また一つ、置き換わる。
そして、全ては日常の中へと侵食し、雪崩れ込んで行くのだった。


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やっちゃいました、色々。
これが兎に角やりたかったんです。
すなわち、文化間ギャップ。
重箱のすみをつつきながら、どんどん行きます。
シナリオそっちのけ!

 
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