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2025年07月01日
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その日、僕は 2

2009年05月09日
完結!
犬ばっかりだ。
もうこれ二次創作でも何でもない!

よく晴れた昼下がり。
規則的な歩みが生み出す心地よい揺れ。
包まれる様なぬくもりにいつの間にか安心していた僕は、とろとろと浅い眠りに誘われる。
麗らかな日差しにふと目を細めたきり、目をあけていることが出来なくなった。
町中のざわつきも、風の音も、今は遠く、どこか静かな世界へと意識が飲み込まれてゆく。
いつしか瞼の裏で感じていた黄色の陽光さえもゆっくりと翳った。
そんな夢と現の間で、僕は懐かしい匂いを嗅いだ。
これはいつもの、そう、僕の家で売っている、油の匂い。
いつも舐めたがってはこっぴどく怒られる、僕にとっては魔性の香りだ。





ぺろり。
自分の舌が勝手に口の端をなめたことに、僕は自分で驚いて目を覚ました。
落ち着かない雰囲気に、思わず振り向けばみんなが、僕を見ていた。
旦那さん、いつもご飯をくれるおかみさん、そして、母さんの声もする。
そっと土間に下ろされた僕に母さんが走り寄る。
しつこいくらいに無事なの?無事なの?と訊かれてはひっくり返されて、体中の匂いを嗅がれた。
僕はどうして帰ってこられたのかが解らなくて、何もかもがよくわからなくて、ただただぼーっとしていた。
ごろごろと土間を転がされながら、母さんの顎の下にある、(僕にもあるらしい)黒い模様を意味も無く見つめていた。





僕をここまで連れてきてくれたらしい大きな人は、暫くおかみさんと何か話していたが、他のお客と変わりなく、小さいつぼの油を買って、お辞儀をして。
そして当たり前に、きびすを返し、帰っていこうとする。
足が、自然とそのあとを追いかけた。
店先の暖簾をくぐるその時に、その人はふと振り向きながら足を止めた。
大きな手が、僕の頭を押さえるように一度撫でて、離れていった。
もう、出るなと言われたような気がして、僕はそれ以上その人を追いかけなかった。
敷居をまたぎ、光の中へ出ていく大きな足を、僕は只見送った。

 

それからどれくらい経っただろう。
僕は欅の木みたくむくむくと大きくなり、すぐに母さんの背を超えた。
店を守り、母さんを守り、おかみさんを守る。
そんな勇ましい誇りさえ、胸に芽生えた。
お店には相変わらず沢山の人が来ては帰るが、その中で、一つだけはっきりと聞き分けられる足音がある。
少し引きずったような、ゆっくりとした重い足音。
それを聞くと、どうしても小さい頃のようにはしゃいだ気持ちになって、店先を走り出てしまう。
その本当の訳は、いつしか忘れてしまったのだけれど、そうして出迎えに行くことだけは、ずっと体にしみついて、どんなに母さんに叱られたって治らない僕の癖になったのだった。




おわり!

*********************


どんくさくて、調子に乗りやすくて、ぼんやりしていて甘えん坊。
そのくせせっかちで短気。
モデルは、昔飼っていたわんこです。
モモちゃんの可愛さは、世界一。いや、宇宙一。
今も愛してる。




 

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