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2025年07月01日
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無題

2009年01月11日
何だか悲しいお話が書きたくて、雪とからめてみました。
ちょっと流血注意です。
そして、少しだけ覚悟をお願い致します。
内容はほぼ完全に、オリジナルです。

雲の上の、ずうっと上の世界には透んだ空色の御殿があって、それはそれは美しくてお優しい天女様がすんでいるの
その方の白い指のあいだから、氷の息吹がほろほろと地上に零れ舞い降りて、雪になるのよ

「じゃあ、雨は?」

雨は・・・、そうね。
きっと、天女さまの涙なのよ



そんな他愛もない御伽噺を、信じていた頃があったこと。
それすら遠く忘れていたのに、どうして思い出したのだろう。
生まれたときから帰る場所などなかった、この命も尽きようというときに。



白く埋められた林の中は、本当に静かだった。
木立の間から差し込む光が、新雪をほのかに輝かせている。
くらりとする頭を気だるく持ち上げれば、穏やかな陽を受けてきらきらと可憐に光りながら、なお音もなく舞い降りる雪。
背に触れる木肌に頭をもたせかけ、重い瞼をゆっくりと閉じたときから、世界は暗闇に包まれた。
痛みも、怖れも。
もう、何も感じぬ。
感じられぬ。
私から失われていく血潮がこの純白を赤黒く染めようとも、明日にはまた新たな純白に塗りつぶされるのだろう。
ここに、この身体があったという事実と共に。
姉さま、お方様。おかしら様。
どうやらここまでのようです。
こんな私をこの世に繋いでくれた、無二の人たち。
大切さを教えてくれた人たち。
どうしてだろう。
今は笑ったお顔しか、思い出せない。

ああ、見える。
あれは初めて任務に出た夜のこと。
それから幾年月、泥の中を生きた。
初めて、死の気配に慄いた嵐の夜。
変わり者の、あの男。
笑った顔すら、知らないひと。
これが走馬灯というものなのだろうか。

この密書とともにここで私が朽ち果てたならば、きっとあの戦も長くは続くまい。
今、私は笑っているのだろうか。
解らないけれど、そんな気がする。
聞こえる、あれは姉さまのお声。
何をそんなに慌てておられるのか。
誰かが頬に触れた気がする。
ああ、暖かい。
姉さま。
もしも、もう一度生まれてこられるなら、もう一度御伽噺を聞かせてください。
そうしたら、今度は、きっと・・・ずっと信じて見せるから。




****************

これは緋色です。
大丈夫です、姉さまは間に合います。
こんなことが光る風の後にあるかどうかは解らないんですが、悲しいお話なら緋色かな、と思って書いてみました。
パラレルとか、フィクション中のフクションだと思ってください!
ごめんなさい。

泥の中の日々に終止符を打った出来事が、きっと光る風の件なのでしょう。
伊作さんと留さんに出会って、彼女の生き方が何かしら変わったならばいいなあと思っています。
でも、その先にこんな未来があるかどうかは、解りません。

林の中に降り積もる雪が綺麗だったので、書きました。





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