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2025年07月06日
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これを入れたかった
2010年01月15日
しばし留めんに入れたかったシーン。
なかなかうまく入らない・・・・。
庭先の、重そうに枝を垂れた木に、柿の実が残っていた。
ほどよく熟れ、さんさんと西日を受けている。
「甘柿か」
実の形の平たいのを見て、仙蔵は何気なくそう言ってみただけであったが、そうだよと言ってすたすたと寄ってきた伊作は、それをいきなりもぎとって、仙蔵の目の前に突き出した。
「ほら」
仙蔵は、一瞬、意味をはかりかねた。
「いや、いい」
やや面食らいつつ、あっさりと断るつもりが、いつになく伊作は引かなかった。
手土産に貰った栗の返礼なのだとか、これからの風邪予防には柿だとか。
押し問答の末、結局、仙蔵が根負けした。
******************
こういうことがあればいいのに・・・・。
と、思う私。
柿燃え(えっ)。
なかなかうまく入らない・・・・。
庭先の、重そうに枝を垂れた木に、柿の実が残っていた。
ほどよく熟れ、さんさんと西日を受けている。
「甘柿か」
実の形の平たいのを見て、仙蔵は何気なくそう言ってみただけであったが、そうだよと言ってすたすたと寄ってきた伊作は、それをいきなりもぎとって、仙蔵の目の前に突き出した。
「ほら」
仙蔵は、一瞬、意味をはかりかねた。
「いや、いい」
やや面食らいつつ、あっさりと断るつもりが、いつになく伊作は引かなかった。
手土産に貰った栗の返礼なのだとか、これからの風邪予防には柿だとか。
押し問答の末、結局、仙蔵が根負けした。
******************
こういうことがあればいいのに・・・・。
と、思う私。
柿燃え(えっ)。
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ミュージカル
2010年01月14日
評判も上々で滑り出した模様ですね。
私もうれしい。
行けそうにないのがとっても残念です。
ああ・・・沢山のちょんまげが・・・・。
さてさて、久々に本業のことなんですけれども、そろそろまた立て込んできそうであります。
本審査は2月の上旬となりました。
無事に通過できますように!
私もうれしい。
行けそうにないのがとっても残念です。
ああ・・・沢山のちょんまげが・・・・。
さてさて、久々に本業のことなんですけれども、そろそろまた立て込んできそうであります。
本審査は2月の上旬となりました。
無事に通過できますように!
これ好きなんです
2010年01月14日
http://anond.hatelabo.jp/20080506041614
司馬遼太郎と尾田先生のとこで声を出して笑ってしまいました。おもしろい。
私も今度自分なりにやってみよう。
司馬遼太郎と尾田先生のとこで声を出して笑ってしまいました。おもしろい。
私も今度自分なりにやってみよう。
わっほい
2010年01月14日
ご感想下さりました方、ありがとうございます。
本当に、文章がかけなくて苦労でしたので、報われました。
とうとうバナーも変えられて、ちょっとほくほくしています。
すっきりと。
テンプレートとかも、かっこいいですね。
サイトデザインが苦手でいけません。
文章サイトって、ふつうフレーム使わないものなのでしょうか?
フレームの方、あまり見ないなあとおもって…。
このままでいいのかしら。
見づらさがあったら、すぐにいってくださいまし。
ふふふ。そして。
今回はつはるを書いていて、気がついたことがあります。
山田先生のご自宅のことです。
原作によると、以下のような特徴があります。
・外廊下、御簾など、広々としている
・虎口がある
・床の間がある
・炭櫃を使っている
まず、虎口が気になりますね。
ちょっとした山城のような側面もありそうです。
床の間があるところから、書院造のようなものをイメージします。
そして、なかなかに広そうでもあります。
民家というよりは、武家屋敷のような風情がありそうです。
山田先生がどういう気持ちであの家を建てたのか。
想像すると、血が騒ぎますねいっひっひ。
それだけの話です。
本当に、文章がかけなくて苦労でしたので、報われました。
とうとうバナーも変えられて、ちょっとほくほくしています。
すっきりと。
テンプレートとかも、かっこいいですね。
サイトデザインが苦手でいけません。
文章サイトって、ふつうフレーム使わないものなのでしょうか?
フレームの方、あまり見ないなあとおもって…。
このままでいいのかしら。
見づらさがあったら、すぐにいってくださいまし。
ふふふ。そして。
今回はつはるを書いていて、気がついたことがあります。
山田先生のご自宅のことです。
原作によると、以下のような特徴があります。
・外廊下、御簾など、広々としている
・虎口がある
・床の間がある
・炭櫃を使っている
まず、虎口が気になりますね。
ちょっとした山城のような側面もありそうです。
床の間があるところから、書院造のようなものをイメージします。
そして、なかなかに広そうでもあります。
民家というよりは、武家屋敷のような風情がありそうです。
山田先生がどういう気持ちであの家を建てたのか。
想像すると、血が騒ぎますねいっひっひ。
それだけの話です。
あげ…
2010年01月13日
あげちゃった…はつはる…
もっと練ればいいのにとか思いつつ、えいっと。
ね、えいっと。
よくあることです。
気に入ってもらえるといいなあ。
あとはしばし留めんをあげようかどうか悩むんだ。
あれから修正したんだけれど…どうかしら。
私情(仙蔵が好きすぎるという)はいりまくりなのでちょっと悩む所。
はつはるには心残りがあって、それは鶸がどれほど青空に映えてかわいいかを書けなかったところ…。
それはきっと利吉さんのせいです。
情景描写も、やっぱり主人公の感じ方に影響を受けるので、こう、あんましポエミーにしないようにしました。
かっちり硬めに。硬派にしました。あれでも。
あ、つまり利吉さんのせいではなく、私のせいです。
もっと練ればいいのにとか思いつつ、えいっと。
ね、えいっと。
よくあることです。
気に入ってもらえるといいなあ。
あとはしばし留めんをあげようかどうか悩むんだ。
あれから修正したんだけれど…どうかしら。
私情(仙蔵が好きすぎるという)はいりまくりなのでちょっと悩む所。
はつはるには心残りがあって、それは鶸がどれほど青空に映えてかわいいかを書けなかったところ…。
それはきっと利吉さんのせいです。
情景描写も、やっぱり主人公の感じ方に影響を受けるので、こう、あんましポエミーにしないようにしました。
かっちり硬めに。硬派にしました。あれでも。
あ、つまり利吉さんのせいではなく、私のせいです。
修正
2010年01月13日
先日ブログで触れましたウィルス感染の確認法ですが、もしかするとセーフモードでないと見えないかもしれません。
この辺りはまだ確かそうなソースを発見しておりません上、ウィルス自体がどんどん変化する可能性もありますので、あまりはっきりしたことでなく…本当にすみません。
本日、アドビよりリーダーのパッチが出ております。
マイクロソフトからアップデートのお知らせも来ていますね。
これで一度、収束に向かうといいですね~
すみません
2010年01月13日
ブログのメンテ直前に投稿したら、おかしなことになってしまいました。
多分何度か投稿ボタンを押してしまったようです。
ひー恥ずかしい。忘れてください。
最近ほんのりネガティブな日記が多いですけれども、実は創作に関してはいつもスーパーネガティブです。
文章を公開してしまっているという恥ずかしさに転げまわりたい気持ちになりつつ、それでも忍たまと情景描写がどうしょうもなく好きであるという欲望のようなものに突き動かされ、何とか運営をしております。
もともと、文系でもなかったし、日本語すら危うい自分が小説…考えるだに恐ろしいことです。
周りに創作をする友人が多かったせいかもしれません。
凄いなあ無理だなあといつも思っていた世界にうっかり飛び込んでしまったという、そんな気持ちで。
いつもおっかなびっくり、やっております。
そういう本音をひた隠し、背筋を伸ばして運営できるよう、自分を叱咤する毎日です。
でも、これが楽しいんだ!
そうです。私はわりとMです。
多分何度か投稿ボタンを押してしまったようです。
ひー恥ずかしい。忘れてください。
最近ほんのりネガティブな日記が多いですけれども、実は創作に関してはいつもスーパーネガティブです。
文章を公開してしまっているという恥ずかしさに転げまわりたい気持ちになりつつ、それでも忍たまと情景描写がどうしょうもなく好きであるという欲望のようなものに突き動かされ、何とか運営をしております。
もともと、文系でもなかったし、日本語すら危うい自分が小説…考えるだに恐ろしいことです。
周りに創作をする友人が多かったせいかもしれません。
凄いなあ無理だなあといつも思っていた世界にうっかり飛び込んでしまったという、そんな気持ちで。
いつもおっかなびっくり、やっております。
そういう本音をひた隠し、背筋を伸ばして運営できるよう、自分を叱咤する毎日です。
でも、これが楽しいんだ!
そうです。私はわりとMです。
はつはる
2010年01月13日
これでは駄目だ!と、読み返してひしひしとそう思ったので、今からごっそり改訂します。
変に懲りすぎて、よく解らないことになってしまっては元も子もないですものね。
さらさらかける才能がないのは切ないけれど、だって書いてきていないのだから仕方がない。
明日にはアップできるといいなあ…。
http://kusabue.otoshiana.com/ohanashi/hatsuharu.html
今夜は大好きな小説をプリントアウトして読みながら眠ろうと思います。
変に懲りすぎて、よく解らないことになってしまっては元も子もないですものね。
さらさらかける才能がないのは切ないけれど、だって書いてきていないのだから仕方がない。
明日にはアップできるといいなあ…。
http://kusabue.otoshiana.com/ohanashi/hatsuharu.html
今夜は大好きな小説をプリントアウトして読みながら眠ろうと思います。
つづきです
2010年01月12日
完結篇。 というほどのドラマはないけれど、終わります。
題名をどうしましょう…。
もう新春でいい気もします。
****************
但馬の国の北西には、中国地方の脊梁から連なる険しい山脈が横たわる。
因幡との国境を守る、さながらそれは天然の要塞である。
利吉のふるさとである氷ノ山は、尾根の中でも一際高く聳え、山中から望む星々は今宵、今にも降り落ちそうな鮮明さで青白く瞬いていた。
その仄明りが雪影に映り、夜の底から白銀の世界を白々と浮き上がらせている。
夜を徹して家路を辿る利吉にとり、天空の星々は闇に浮かんだ、只ひとつのの道しるべであった。
やがて地平がようようと明るむにつれ、くっきりと紫紺に浮かんでいたそれは、見上げるごとに輝きが褪せてゆき、ついに月白の空に解け消えた。
昇る日の気配が大気に満ち、その気配が風を動かす。
静寂を残し、夜が明ける。
そしてそれは、新しい年の訪れでもあった。
しかし、凍てついた山中に何の寿ぎも、それを交わす相手もあるでなし。
利吉は木立を縫って山腹へ至る小道―――もとは古い獣道であった―――を黙々と、澱みない足取りで登っていった。
修行に明け暮れた少年の頃、幾度となく登り下りした山道を利吉は一散に登っていった。
最後の難所に差し掛かると、勾配はいよいよ厳しいものとなる。
額にうっすらと汗を浮かべる利吉の頭上で、葉を落とした木々の梢は、厚く霜をまとったまま、明るい空へ手を伸べている。
さらさらと微かな音をたて、雪の零れたあたりをつい見やると、樹冠を漏れた陽光が、痛いほどに瞳をさした。
宵闇にどれほど馴染んだ利吉であろうと、眠らずに過ごした翌朝は五感がささくれる。
裏腹に、目の裏は重たるく、体の芯は疲れに火照り、熱が渦を巻いていた。
仕事が明けたその足で、利吉は故郷をさして摂津を発った。
忍びは日に三十里を走破すると云われるが、だからといって疲れを知らぬわけではない。
雪被りした古木の根を足がかりに、急勾配を登りきったところで、とうとう利吉は足を止めた。
途端、たまった疲労がせきを切り、どっとその背に圧し掛かる。
林間をなだらかに登る一本道を、あと一刻ほど辿れば、見慣れた石段が見えてくるだろう。
約束どおりに元旦を家で迎えることは叶わなかったが、ようやくここまで帰ってきた安堵に、緊張の糸が柔らかくほどけていく。
利吉は静かに瞼を閉じ、透き通る天を仰いだ。
(今時分、母上はまだお休みだろう。少しでも、休んでから帰るとするか)
ゆっくりと腹から吐いた熱い息は、中空に白くたなびいて、やがて消えた。
氷の山の森の土はすべて、深く落ち葉に覆われている。
その暖かな寝床をよりしろに、稜の木や、背の低い笹が生え、獣や虫共を育む。
それら全てが、今は真綿のような柔らかな雪の褥に眠っていた。
稜の古木に背を預け、雪だまりに脚を投げ出すと、熱をもった脛に、じわじわとしみる冷たさが心地よい。
利吉は暫くじっとしたあと、笹の茂みに手を伸ばして、手ごろな氷柱を折り取った。
口に含むと、氷はゆるやかに解け、涼しく咽を潤した。
さすがに茫洋としてきていた意識が、ひとさしの水に凛と冴えるようである。
咥えたまま微かな気配に首をあげると、東の空を、小鳥の群が一散に飛んでくるのが目にはいった。
賑やかしく鳴き交わす声がみるみる近づいたとた思えば、あれよあれよという間に、近くの樹冠に鈴なりになった。
鶸である。
明るい山吹色した羽根を軽く羽ばたいて梢に遊び、そこここで無心に餌を探している。
せわしない朝餉の景色をぼんやり眺めていると、少し遅れてきた一羽が、雪の重みで垂れ下がる落葉松の枝へ降り立った。
三間と離れぬ距離の利吉には気付かない様子で、さらに細い枝に飛び移ると、そこに逆さにつかまって揺れながら、小ぶりの松かさを啄ばみ始める。
一つ、ふたつ、つつく度に忙しく首を動かしては、ちるちると機嫌よい声をあげた。
つめたく尖った氷柱の先端を咥内で弄びながら、利吉はその様子に眩しく双眸を細める。
小さな体躯で、まったく、器用なものである。
昨今、山城であれ、平城であれ、郭の内には松が好んで植えられる。
松は成長がはやいうえ、有事の際はそれを逆茂木にしたり、究極には食料にすらして食いつなぐことができるからだ。
忍び入る側とって、これは大変厄介なことである。
大抵、人の手で育てられた松は直ぐと天に向かい伸びる上、側枝は折れやすく、足がかりが少ない。
樹皮も葉も、ささくれてとても居心地がよいとは言えない。
しなやかな枝を大らかに拡げる稜の木やホソと違い、これほど潜むに難儀する樹種もない。
かつて氷ノ山の子天狗の名を欲しいままにした利吉には、木の葉隠れならば町育ちの忍なぞには決して劣らぬ自負があった。
それが、いつまで経っても拳ほどの大きさもない、小鳥の身のこなしに叶わぬのである。
利吉は、忍の技を全て、父と母から受け継いだ。
ただ教わるだけでは忍道はならぬものだと、父は言った。
師から、敵から、自然から、この世の全てから技を盗めと。
平静を保つ傍らで、常に心を鮮やかに沸き立たせ、何時いかなる時も思考を巡らせてこそ、忍でありながら人の道を生き抜けるのだと。
そう言った父の背中は、誰よりも近くありながら、利吉には酷く遠く思えた。
今もまだ、利吉はそれを追いかけているのである。
不意に、梢の高みから、鶸が一声鋭く鳴いた。
それが合図であったのだろうか。
群は餌を啄ばむのを止め、落葉松から一斉に飛び立った。
そしてみるみる木立の間を、逃げるように遠くなる。
見送って、利吉は、すいと空を見上げた。
思ったとおり、紺碧の中に、遠く黒い影があった。
(クマタカか……)
鶸の群は、この影に驚いて逃げていったのであろう。
逞しい翼で天空に悠々と弧を描き、大空を滑るように高く高く舞っている。
凍てついた山野に、その澄んだ鳴き声が木霊したとき、利吉の心もまた、張りつめて震えた。
秘境の自然のありさまは、少年の日と何一つ変わることなく、利吉の心身を吹き抜けてゆく。
そこには、母に抱かれるような懐かしさも、確かにあった。
しかし、クマタカのように、高く、遠く、この世を俯瞰することも。
鶸のように軽々と梢を渡ることも。
焦がれ、見果てる先はこの上もなく遠い。
こうしてふるさとの大地に一人包まれるとき、利吉の脳裏には決まってあの父の背中が蘇るのである。
風切り音にはっと身構えた時には、それはすぐ目の前に迫っていた。
避け損ね、眉間に命中した雪だまは、利吉の顔面で派手に飛沫をあげて飛び散った。
溜まらず鼻を押さえて咳き込むと、聞き知った無邪気な笑い声が、木陰からあがった。
「は、母上!」
「油断しましたね、利吉」
大樹の陰から現れた姿は、重ねた小袖に笠蓑をつけ、動きやすい袴姿に、藁沓をはいている。
口元を隠した袖の紅小紋が鮮やかで、雪になれた目に眩しくしみた。
「こんな早くに、起きておられたのですか」
「そろそろ頃合だと思って、見にきたのです」
「ええと、あの、父上はですね……」
「解っています。今年は当直と補習でしたね」
「すみません、また帰るのがたいへん遅くなりまして…」
決まり悪そうに眉を下げた利吉に、母は優しく目を細めた。
家に続く石段を、母子連れ立って登る。
石段の雪はきれいにかかれ、避けた雪がうずたかく石垣の下に積んであった。
先を行く母は、何時もどおりにしゃんと背筋を伸ばしているが、息子を迎えた喜びを身体いっぱいに溢れさせている様子で、その心がどこか申しわけなくも有り難く、利吉は密かに目元を緩めた。
「利吉」
不意に、名を呼ばれて顔を上げる。
「さっきは、難しい顔をして、何を思っていましたか」
さっきとは、森でクマタカを見上げていた時のことであろうか。
利吉が答えられずにいると、母は柔らかく笑って、
「本当にあなたは、父上に似てきましたね」
と、唐突にそう言った。
しかし利吉は、ゆっくりと首を横に振る。
「……こうして帰って来ては初心に戻り、思い知らされています。私はまだまだなのだと」
神妙な声でそう答えたところ、またくすくすと笑う声が返った。
「そんなことは、当たり前です」
「え」
「若い頃の父上に、あなたが似てきたと言ったのですよ」
石段を登りきったところで立ち止まってしまった利吉へ、その母は黒髪を揺らし、振り向いた。
瞬間の、凛としながらも優しい面差しを、利吉はとても美しいと思った。
「そうやって些細なことでも難しく考えなさるところが」
そう言って、母は籬の戸を開き、雪の前庭へ利吉を誘う。
「おかえりなさい」
軒を潜れば、炭櫃でしゅんしゅんと湯が沸いており、飯の炊ける香りが甘く通った。
母はもう先にあがって、忙しく朝餉の世話を焼くつもりである。
この母にこそ、生涯かなうはずもない、と利吉は心中で呟き、言われるまま後手に扉を閉めた。
間もなく、炊事場の小窓から、ほこほこと白い煙が立ち上る。
戸口にかかった二人分の蓑を、新春の陽光がのどかに照らしていた。
終
**************
お正月要素が消えたよ・・・・
題名をどうしましょう…。
もう新春でいい気もします。
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但馬の国の北西には、中国地方の脊梁から連なる険しい山脈が横たわる。
因幡との国境を守る、さながらそれは天然の要塞である。
利吉のふるさとである氷ノ山は、尾根の中でも一際高く聳え、山中から望む星々は今宵、今にも降り落ちそうな鮮明さで青白く瞬いていた。
その仄明りが雪影に映り、夜の底から白銀の世界を白々と浮き上がらせている。
夜を徹して家路を辿る利吉にとり、天空の星々は闇に浮かんだ、只ひとつのの道しるべであった。
やがて地平がようようと明るむにつれ、くっきりと紫紺に浮かんでいたそれは、見上げるごとに輝きが褪せてゆき、ついに月白の空に解け消えた。
昇る日の気配が大気に満ち、その気配が風を動かす。
静寂を残し、夜が明ける。
そしてそれは、新しい年の訪れでもあった。
しかし、凍てついた山中に何の寿ぎも、それを交わす相手もあるでなし。
利吉は木立を縫って山腹へ至る小道―――もとは古い獣道であった―――を黙々と、澱みない足取りで登っていった。
修行に明け暮れた少年の頃、幾度となく登り下りした山道を利吉は一散に登っていった。
最後の難所に差し掛かると、勾配はいよいよ厳しいものとなる。
額にうっすらと汗を浮かべる利吉の頭上で、葉を落とした木々の梢は、厚く霜をまとったまま、明るい空へ手を伸べている。
さらさらと微かな音をたて、雪の零れたあたりをつい見やると、樹冠を漏れた陽光が、痛いほどに瞳をさした。
宵闇にどれほど馴染んだ利吉であろうと、眠らずに過ごした翌朝は五感がささくれる。
裏腹に、目の裏は重たるく、体の芯は疲れに火照り、熱が渦を巻いていた。
仕事が明けたその足で、利吉は故郷をさして摂津を発った。
忍びは日に三十里を走破すると云われるが、だからといって疲れを知らぬわけではない。
雪被りした古木の根を足がかりに、急勾配を登りきったところで、とうとう利吉は足を止めた。
途端、たまった疲労がせきを切り、どっとその背に圧し掛かる。
林間をなだらかに登る一本道を、あと一刻ほど辿れば、見慣れた石段が見えてくるだろう。
約束どおりに元旦を家で迎えることは叶わなかったが、ようやくここまで帰ってきた安堵に、緊張の糸が柔らかくほどけていく。
利吉は静かに瞼を閉じ、透き通る天を仰いだ。
(今時分、母上はまだお休みだろう。少しでも、休んでから帰るとするか)
ゆっくりと腹から吐いた熱い息は、中空に白くたなびいて、やがて消えた。
氷の山の森の土はすべて、深く落ち葉に覆われている。
その暖かな寝床をよりしろに、稜の木や、背の低い笹が生え、獣や虫共を育む。
それら全てが、今は真綿のような柔らかな雪の褥に眠っていた。
稜の古木に背を預け、雪だまりに脚を投げ出すと、熱をもった脛に、じわじわとしみる冷たさが心地よい。
利吉は暫くじっとしたあと、笹の茂みに手を伸ばして、手ごろな氷柱を折り取った。
口に含むと、氷はゆるやかに解け、涼しく咽を潤した。
さすがに茫洋としてきていた意識が、ひとさしの水に凛と冴えるようである。
咥えたまま微かな気配に首をあげると、東の空を、小鳥の群が一散に飛んでくるのが目にはいった。
賑やかしく鳴き交わす声がみるみる近づいたとた思えば、あれよあれよという間に、近くの樹冠に鈴なりになった。
鶸である。
明るい山吹色した羽根を軽く羽ばたいて梢に遊び、そこここで無心に餌を探している。
せわしない朝餉の景色をぼんやり眺めていると、少し遅れてきた一羽が、雪の重みで垂れ下がる落葉松の枝へ降り立った。
三間と離れぬ距離の利吉には気付かない様子で、さらに細い枝に飛び移ると、そこに逆さにつかまって揺れながら、小ぶりの松かさを啄ばみ始める。
一つ、ふたつ、つつく度に忙しく首を動かしては、ちるちると機嫌よい声をあげた。
つめたく尖った氷柱の先端を咥内で弄びながら、利吉はその様子に眩しく双眸を細める。
小さな体躯で、まったく、器用なものである。
昨今、山城であれ、平城であれ、郭の内には松が好んで植えられる。
松は成長がはやいうえ、有事の際はそれを逆茂木にしたり、究極には食料にすらして食いつなぐことができるからだ。
忍び入る側とって、これは大変厄介なことである。
大抵、人の手で育てられた松は直ぐと天に向かい伸びる上、側枝は折れやすく、足がかりが少ない。
樹皮も葉も、ささくれてとても居心地がよいとは言えない。
しなやかな枝を大らかに拡げる稜の木やホソと違い、これほど潜むに難儀する樹種もない。
かつて氷ノ山の子天狗の名を欲しいままにした利吉には、木の葉隠れならば町育ちの忍なぞには決して劣らぬ自負があった。
それが、いつまで経っても拳ほどの大きさもない、小鳥の身のこなしに叶わぬのである。
利吉は、忍の技を全て、父と母から受け継いだ。
ただ教わるだけでは忍道はならぬものだと、父は言った。
師から、敵から、自然から、この世の全てから技を盗めと。
平静を保つ傍らで、常に心を鮮やかに沸き立たせ、何時いかなる時も思考を巡らせてこそ、忍でありながら人の道を生き抜けるのだと。
そう言った父の背中は、誰よりも近くありながら、利吉には酷く遠く思えた。
今もまだ、利吉はそれを追いかけているのである。
不意に、梢の高みから、鶸が一声鋭く鳴いた。
それが合図であったのだろうか。
群は餌を啄ばむのを止め、落葉松から一斉に飛び立った。
そしてみるみる木立の間を、逃げるように遠くなる。
見送って、利吉は、すいと空を見上げた。
思ったとおり、紺碧の中に、遠く黒い影があった。
(クマタカか……)
鶸の群は、この影に驚いて逃げていったのであろう。
逞しい翼で天空に悠々と弧を描き、大空を滑るように高く高く舞っている。
凍てついた山野に、その澄んだ鳴き声が木霊したとき、利吉の心もまた、張りつめて震えた。
秘境の自然のありさまは、少年の日と何一つ変わることなく、利吉の心身を吹き抜けてゆく。
そこには、母に抱かれるような懐かしさも、確かにあった。
しかし、クマタカのように、高く、遠く、この世を俯瞰することも。
鶸のように軽々と梢を渡ることも。
焦がれ、見果てる先はこの上もなく遠い。
こうしてふるさとの大地に一人包まれるとき、利吉の脳裏には決まってあの父の背中が蘇るのである。
風切り音にはっと身構えた時には、それはすぐ目の前に迫っていた。
避け損ね、眉間に命中した雪だまは、利吉の顔面で派手に飛沫をあげて飛び散った。
溜まらず鼻を押さえて咳き込むと、聞き知った無邪気な笑い声が、木陰からあがった。
「は、母上!」
「油断しましたね、利吉」
大樹の陰から現れた姿は、重ねた小袖に笠蓑をつけ、動きやすい袴姿に、藁沓をはいている。
口元を隠した袖の紅小紋が鮮やかで、雪になれた目に眩しくしみた。
「こんな早くに、起きておられたのですか」
「そろそろ頃合だと思って、見にきたのです」
「ええと、あの、父上はですね……」
「解っています。今年は当直と補習でしたね」
「すみません、また帰るのがたいへん遅くなりまして…」
決まり悪そうに眉を下げた利吉に、母は優しく目を細めた。
家に続く石段を、母子連れ立って登る。
石段の雪はきれいにかかれ、避けた雪がうずたかく石垣の下に積んであった。
先を行く母は、何時もどおりにしゃんと背筋を伸ばしているが、息子を迎えた喜びを身体いっぱいに溢れさせている様子で、その心がどこか申しわけなくも有り難く、利吉は密かに目元を緩めた。
「利吉」
不意に、名を呼ばれて顔を上げる。
「さっきは、難しい顔をして、何を思っていましたか」
さっきとは、森でクマタカを見上げていた時のことであろうか。
利吉が答えられずにいると、母は柔らかく笑って、
「本当にあなたは、父上に似てきましたね」
と、唐突にそう言った。
しかし利吉は、ゆっくりと首を横に振る。
「……こうして帰って来ては初心に戻り、思い知らされています。私はまだまだなのだと」
神妙な声でそう答えたところ、またくすくすと笑う声が返った。
「そんなことは、当たり前です」
「え」
「若い頃の父上に、あなたが似てきたと言ったのですよ」
石段を登りきったところで立ち止まってしまった利吉へ、その母は黒髪を揺らし、振り向いた。
瞬間の、凛としながらも優しい面差しを、利吉はとても美しいと思った。
「そうやって些細なことでも難しく考えなさるところが」
そう言って、母は籬の戸を開き、雪の前庭へ利吉を誘う。
「おかえりなさい」
軒を潜れば、炭櫃でしゅんしゅんと湯が沸いており、飯の炊ける香りが甘く通った。
母はもう先にあがって、忙しく朝餉の世話を焼くつもりである。
この母にこそ、生涯かなうはずもない、と利吉は心中で呟き、言われるまま後手に扉を閉めた。
間もなく、炊事場の小窓から、ほこほこと白い煙が立ち上る。
戸口にかかった二人分の蓑を、新春の陽光がのどかに照らしていた。
終
**************
お正月要素が消えたよ・・・・
書き直し
2010年01月12日
但馬の国の北西には、中国地方の脊梁から連なる険しい山脈が横たわり、天然の要塞となり国境を守っている。
利吉のふるさとである氷ノ山は、尾根の中でも一際高く聳え、山中から望む星々は今宵、今にも降り落ちそうな鮮明さで青白く瞬いていた。
その仄明りが雪影に映り、夜の底から白銀の世界を白々と浮き上がらせている。
夜を徹して家路を辿る利吉にとり、天空の星々は闇に浮かんだ、只ひとつのの道しるべであった。
やがて地平がようようと明るむにつれ、くっきりと紫紺に浮かんでいたそれは、見上げるごとに輝きが褪せてゆき、ついに月白の空に解け消えた。
昇る日の気配が大気に満ち、その気配が風を動かす。
静寂を残して、夜が明ける。
そしてそれは、新しい年の訪れでもあった。
しかし、凍てついた山中に何の寿ぎも、それを交わす相手もあるでなし。
利吉は木立を縫って山腹へ至る小道―――もとは古い獣道であった―――を黙々と、澱みない足取りで登っていった。
修行に明け暮れた少年の頃、幾度となく登り下りした山道を利吉は一散に登っていった。
最後の難所に差し掛かると、勾配はいよいよ厳しいものとなる。
額にうっすらと汗を浮かべる利吉の頭上で、葉を落とした木々の梢は、厚く霜をまとったまま、明るい空へ手を伸べている。
さらさらと微かな音をたて、雪の零れたあたりをつい見やると、樹冠を漏れた陽光が、痛いほどに瞳をさした。
宵闇にどれほど馴染んだ利吉であろうと、眠らずに過ごした翌朝は五感がささくれる。
裏腹に、目の裏は重たるく、体の芯は疲れに火照り、熱が渦を巻いていた。
仕事が明けたその足で、利吉は故郷をさして摂津を発った。
忍びは日に里を走破すると云われるが、だからといって疲れを知らぬわけではない。
雪被りした古木の根を足がかりに、急勾配を登りきったところで、とうとう利吉は足を止めた。
途端、たまった疲労がせきを切り、どっと背に圧し掛かる。
林間をなだらかに登る一本道を、あと一刻ほど辿れば、母の待つ家が見えてくるだろう。
約束どおりに元旦を家で迎えることは叶わなかったが、ようやくここまで帰ってきた安堵に、緊張の糸が柔らかくほどけていく。
利吉は静かに瞼を閉じ、透き通る天を仰いだ。
(今時分、母上はまだお休みだろう。少しでも、休んでから行くか)
ゆっくりと腹から吐いた熱い息は、中空に白くたなびいて、やがて消えた。
森の土は、深い落ち葉に覆われている。
その暖かな寝床をよりしろに、稜の木や、背の低い笹が生えて、獣や虫共を育む。
それら全てが、今は真綿のような柔らかな雪の褥の下に眠っていた。
稜の古木に背を預け、雪だまりに脚を投げ出すと、熱をもった脛に、じわじわとしみる冷たさが心地よい。
利吉は暫くじっとしたあと、笹の茂みに手を伸ばして、手ごろな氷柱を折り取った。
口に含むと、氷はゆるやかに甘く解け、涼しく咽を潤した。
さすがに茫洋としてきていた意識が、ひとさしの水に凛と冴えるようである。
咥えたまま微かな気配に首をあげると、東の空を、小鳥の群が一散に飛んでくるのが目にはいった。
賑やかしく鳴き交わす声がみるみる近づいたとた思えば、あれよあれよという間に、近くの樹冠に鈴なりになった。
鶸である。
明るい山吹色した羽根を軽く羽ばたいて梢に遊び、そこここで無心に餌を探している。
せわしない朝餉の景色をぼんやり眺めていると、少し遅れてきた一羽が、雪の重みで垂れ下がる落葉松の枝へ降り立った。
三間と離れぬ距離の利吉には気付かない様子で、さらに細い枝に飛び移ると、そこに逆さにつかまって揺れながら、小ぶりの松かさを啄ばみ始める。
一つ、ふたつ、つつく度に忙しく首を動かしては、ちるちると機嫌よい声をあげた。
つめたく尖った氷柱の先端を咥内で弄びながら、利吉はその様子に眩しく双眸を細める。
まったく、器用なものである。
昨今、山城であれ、平城であれ、郭の内には松が好んで植えられる。
松は成長がはやいうえ、有事の際はそれを逆茂木にしたり、究極には食料にすらして食いつなぐことができるからだ。
忍び入る側とって、これは大変厄介なことである。
大抵、人の手で育てられた松は直ぐと天に向かい伸びる上、側枝は折れやすく、足がかりが少ない。
樹皮も葉も、ささくれてとても居心地がよいとは言えない。
しなやかな枝を大らかに拡げる稜の木やホソと違い、これほど潜むに難儀する樹種もない。
かつて氷ノ山の子天狗の名を欲しいままにした利吉には、木の葉隠れならば町育ちの忍なぞには決して劣らぬ自負があった。
それが、いつまで経っても拳ほどの大きさもない、小鳥の身のこなしに叶わぬのである。
利吉は、忍の技を全て、父と母から受け継いだ。
しかしただ教わるだけでは忍道はならぬものだと、父は言う。
自分から、自然から、この世の全てから技を盗めと。
平静を保つ傍らで、常に心を鮮やかに沸き立たせ、何時いかなる時も思考を巡らせてこそ、忍でありながら人の道を生き抜けるのだと。
そう言った父の背中は、誰よりも近くありながら、利吉には酷く遠く思えた。
今もまだ、利吉はそれを追いかけているのである。
不意に、高い梢にいた鶸が、鋭い声をあげた。
それを合図に、群は餌を啄ばむのを止め、一斉に飛び立ち、木立の中を遠くなった。
利吉は、空を高く見上げる。
紺碧に弧を描き、滑るように舞う、遠い遠い影がある。
クマタカである。
凍りついた山野に、その澄んだ鳴き声が木霊したとき、利吉の心もまた、張りつめて震えた。
秘境に抱かれた自然は、何一つ変わることなく利吉の心を吹き抜けてゆく。
そこには、母に抱かれるような懐かしさも、確かにあった。
しかし、鶸のように軽々と梢を渡ることも、クマタカのように、高く、遠く、世を俯瞰することも。
焦がれ、見果てる先はこの上もなく遠い。
こうしてふるさとの大地に一人包まれるとき、利吉の脳裏には決まってあの父の背中が蘇るのである。
*********************
何だかたのしくなってきた!
しかし、動植物を古名で書くと何がなにやらさっぱりですね。
今回はちょっとこだわってみたのですが、うーん。
意味がないかもしれません。
利吉のふるさとである氷ノ山は、尾根の中でも一際高く聳え、山中から望む星々は今宵、今にも降り落ちそうな鮮明さで青白く瞬いていた。
その仄明りが雪影に映り、夜の底から白銀の世界を白々と浮き上がらせている。
夜を徹して家路を辿る利吉にとり、天空の星々は闇に浮かんだ、只ひとつのの道しるべであった。
やがて地平がようようと明るむにつれ、くっきりと紫紺に浮かんでいたそれは、見上げるごとに輝きが褪せてゆき、ついに月白の空に解け消えた。
昇る日の気配が大気に満ち、その気配が風を動かす。
静寂を残して、夜が明ける。
そしてそれは、新しい年の訪れでもあった。
しかし、凍てついた山中に何の寿ぎも、それを交わす相手もあるでなし。
利吉は木立を縫って山腹へ至る小道―――もとは古い獣道であった―――を黙々と、澱みない足取りで登っていった。
修行に明け暮れた少年の頃、幾度となく登り下りした山道を利吉は一散に登っていった。
最後の難所に差し掛かると、勾配はいよいよ厳しいものとなる。
額にうっすらと汗を浮かべる利吉の頭上で、葉を落とした木々の梢は、厚く霜をまとったまま、明るい空へ手を伸べている。
さらさらと微かな音をたて、雪の零れたあたりをつい見やると、樹冠を漏れた陽光が、痛いほどに瞳をさした。
宵闇にどれほど馴染んだ利吉であろうと、眠らずに過ごした翌朝は五感がささくれる。
裏腹に、目の裏は重たるく、体の芯は疲れに火照り、熱が渦を巻いていた。
仕事が明けたその足で、利吉は故郷をさして摂津を発った。
忍びは日に里を走破すると云われるが、だからといって疲れを知らぬわけではない。
雪被りした古木の根を足がかりに、急勾配を登りきったところで、とうとう利吉は足を止めた。
途端、たまった疲労がせきを切り、どっと背に圧し掛かる。
林間をなだらかに登る一本道を、あと一刻ほど辿れば、母の待つ家が見えてくるだろう。
約束どおりに元旦を家で迎えることは叶わなかったが、ようやくここまで帰ってきた安堵に、緊張の糸が柔らかくほどけていく。
利吉は静かに瞼を閉じ、透き通る天を仰いだ。
(今時分、母上はまだお休みだろう。少しでも、休んでから行くか)
ゆっくりと腹から吐いた熱い息は、中空に白くたなびいて、やがて消えた。
森の土は、深い落ち葉に覆われている。
その暖かな寝床をよりしろに、稜の木や、背の低い笹が生えて、獣や虫共を育む。
それら全てが、今は真綿のような柔らかな雪の褥の下に眠っていた。
稜の古木に背を預け、雪だまりに脚を投げ出すと、熱をもった脛に、じわじわとしみる冷たさが心地よい。
利吉は暫くじっとしたあと、笹の茂みに手を伸ばして、手ごろな氷柱を折り取った。
口に含むと、氷はゆるやかに甘く解け、涼しく咽を潤した。
さすがに茫洋としてきていた意識が、ひとさしの水に凛と冴えるようである。
咥えたまま微かな気配に首をあげると、東の空を、小鳥の群が一散に飛んでくるのが目にはいった。
賑やかしく鳴き交わす声がみるみる近づいたとた思えば、あれよあれよという間に、近くの樹冠に鈴なりになった。
鶸である。
明るい山吹色した羽根を軽く羽ばたいて梢に遊び、そこここで無心に餌を探している。
せわしない朝餉の景色をぼんやり眺めていると、少し遅れてきた一羽が、雪の重みで垂れ下がる落葉松の枝へ降り立った。
三間と離れぬ距離の利吉には気付かない様子で、さらに細い枝に飛び移ると、そこに逆さにつかまって揺れながら、小ぶりの松かさを啄ばみ始める。
一つ、ふたつ、つつく度に忙しく首を動かしては、ちるちると機嫌よい声をあげた。
つめたく尖った氷柱の先端を咥内で弄びながら、利吉はその様子に眩しく双眸を細める。
まったく、器用なものである。
昨今、山城であれ、平城であれ、郭の内には松が好んで植えられる。
松は成長がはやいうえ、有事の際はそれを逆茂木にしたり、究極には食料にすらして食いつなぐことができるからだ。
忍び入る側とって、これは大変厄介なことである。
大抵、人の手で育てられた松は直ぐと天に向かい伸びる上、側枝は折れやすく、足がかりが少ない。
樹皮も葉も、ささくれてとても居心地がよいとは言えない。
しなやかな枝を大らかに拡げる稜の木やホソと違い、これほど潜むに難儀する樹種もない。
かつて氷ノ山の子天狗の名を欲しいままにした利吉には、木の葉隠れならば町育ちの忍なぞには決して劣らぬ自負があった。
それが、いつまで経っても拳ほどの大きさもない、小鳥の身のこなしに叶わぬのである。
利吉は、忍の技を全て、父と母から受け継いだ。
しかしただ教わるだけでは忍道はならぬものだと、父は言う。
自分から、自然から、この世の全てから技を盗めと。
平静を保つ傍らで、常に心を鮮やかに沸き立たせ、何時いかなる時も思考を巡らせてこそ、忍でありながら人の道を生き抜けるのだと。
そう言った父の背中は、誰よりも近くありながら、利吉には酷く遠く思えた。
今もまだ、利吉はそれを追いかけているのである。
不意に、高い梢にいた鶸が、鋭い声をあげた。
それを合図に、群は餌を啄ばむのを止め、一斉に飛び立ち、木立の中を遠くなった。
利吉は、空を高く見上げる。
紺碧に弧を描き、滑るように舞う、遠い遠い影がある。
クマタカである。
凍りついた山野に、その澄んだ鳴き声が木霊したとき、利吉の心もまた、張りつめて震えた。
秘境に抱かれた自然は、何一つ変わることなく利吉の心を吹き抜けてゆく。
そこには、母に抱かれるような懐かしさも、確かにあった。
しかし、鶸のように軽々と梢を渡ることも、クマタカのように、高く、遠く、世を俯瞰することも。
焦がれ、見果てる先はこの上もなく遠い。
こうしてふるさとの大地に一人包まれるとき、利吉の脳裏には決まってあの父の背中が蘇るのである。
*********************
何だかたのしくなってきた!
しかし、動植物を古名で書くと何がなにやらさっぱりですね。
今回はちょっとこだわってみたのですが、うーん。
意味がないかもしれません。
白妙
2010年01月12日
色々な意味でまだまだ白妙に取り掛かれる状態ではないんですが、書きたいです、本当は。
白妙を書くために草笛を立ち上げてしまったようなものだし…。
素敵な作品に触れれば触れるほど、そう思います。
本当に皆さん素晴らしくて、羨ましいと思う前に、なんというか励まされます。
幸せなサイクルが生まれている。
白妙は今の所、ほのぼのと進んでいるお話ではありますが、自分の限界に挑戦したいのです。
そのために誰になんと言われようとも。
筆がすべらなくても、力が足りなくても、知識がなくても。
やっぱり書きたいのです。
こんな所で一人でハードルをあげていても仕方ないのですけども。
いけない、酔っ払いですね完全に。
飲み会がまだ階下で続いています。
美味しいお酒でございました。
まあ、明日も結構早いので、そろそろ休まないといけませぬ。
おやすみなさい~。。
白妙を書くために草笛を立ち上げてしまったようなものだし…。
素敵な作品に触れれば触れるほど、そう思います。
本当に皆さん素晴らしくて、羨ましいと思う前に、なんというか励まされます。
幸せなサイクルが生まれている。
白妙は今の所、ほのぼのと進んでいるお話ではありますが、自分の限界に挑戦したいのです。
そのために誰になんと言われようとも。
筆がすべらなくても、力が足りなくても、知識がなくても。
やっぱり書きたいのです。
こんな所で一人でハードルをあげていても仕方ないのですけども。
いけない、酔っ払いですね完全に。
飲み会がまだ階下で続いています。
美味しいお酒でございました。
まあ、明日も結構早いので、そろそろ休まないといけませぬ。
おやすみなさい~。。
ちくちく
2010年01月11日
タートルネックのセーターは暖かいけれど、ちょっとかゆい。
ジレンマ。
利吉さんのお話をちくちくと弄っています。
氷ノ山に行きたい。
ブナの原生林があるらしいですよ。
いいなあブナ。ブナとか、とにかく原生林のファンです。
昨日は根幹がどうのとか呟きましたけれど、今日読んであまりの当たり前さにびっくり。
でも私にとっては、本当に貴重なことで…なんだろう。
忍たまの二次創作に入っていったのが復刊からだったからだと思うんですけれども、あんまり、自分はこうなんだ!っていうのが、はっきりしていないんです。
だから一つ一つ、拾い集めていっているのです。
利吉さんのお話、大分読みにくいですね。
何だか地に足がついていない感じ。
もうちょっと練らなければ。
ジレンマ。
利吉さんのお話をちくちくと弄っています。
氷ノ山に行きたい。
ブナの原生林があるらしいですよ。
いいなあブナ。ブナとか、とにかく原生林のファンです。
昨日は根幹がどうのとか呟きましたけれど、今日読んであまりの当たり前さにびっくり。
でも私にとっては、本当に貴重なことで…なんだろう。
忍たまの二次創作に入っていったのが復刊からだったからだと思うんですけれども、あんまり、自分はこうなんだ!っていうのが、はっきりしていないんです。
だから一つ一つ、拾い集めていっているのです。
利吉さんのお話、大分読みにくいですね。
何だか地に足がついていない感じ。
もうちょっと練らなければ。
つづき・・・・
2010年01月11日
というか、焼き直ししつつ。
うーん。
読みにくくないか心配です。
但馬の国の戌亥には、因幡との国境を守るように、険しい山脈が連なっている。
利吉のふるさとである氷ノ山は、それらの中でも一際高く天空にせり出しており、山中から望む星々は、今宵も降り落ちそうな鮮明さで青白く瞬いていた。
その仄明りが、行く手の闇に積雪を白々と浮き上がらせ、反対に森の影を漆黒に塗り染める。
夜を通して帰路を急ぐ利吉にとり、天空の星々は闇に浮かんだ、只ひとつのの道しるべであった。
やがて地平からようようと明るむにつれ、くっきりと紫紺に浮かんでいたそれは、見上げるごとに輝きが褪せてゆき、ついに月白の空に解け消えた。
日の昇る気配は大気に満ち、風を呼ぶ。
雲ひとつない、快晴の朝である。
そしてそれは、新しい年の訪れでもあった。
しかし凍てついた山中に何の寿ぎも、それを交わす相手もあるでなし。
利吉は木立を縫って山腹へ至る小道―――もとは古い獣道であった―――を、澱みない足取りで登っていった。
修行に明け暮れた少年の頃、幾度となく登り下りした道である。
最後の難所に差し掛かり、勾配はいよいよ厳しくなってきた。
額にうっすらと汗を浮かべる利吉の頭上で、葉を落とした木々の梢は、明るい空へ手を伸べている。
さらさらと微かな音をたて、雪の零れたあたりをつい見やると、枝を漏れた光が、痛いほどに瞳をさした。
宵闇にどれほど馴染んだ利吉であろうと、眠らずに過ごした翌朝は五感がささくれる。
雪のした古木の根を足がかりに、急勾配を登りきったところで、利吉は不意に足を止めた。
途端、体中にたまった疲労がせきを切り、どっと背から圧し掛かる。
林間をなだらかに登りながらくねるこの一本道を一刻ほど辿れば、母待つ家が見えてくるだろう。
約束どおりに元旦を生家で迎えることは叶わなかったが、ようやくここまで帰ってきた安堵に、緊張の糸が柔らかくほどけていく。
利吉は静かに瞼を閉じ、透き通る天を仰いだ。
ゆっくりと腹から吐いた白い息は、中空にゆるゆるとたなびいて、やがて消えた。
古木に背を預け、雪だまりに脚を投げ出す。
熱をもった脛に、じわじわとしみる冷たさが心地よい。
利吉は暫くじっとしたあと、すいと茂みに手を伸ばして、手ごろな氷柱を折り取った。
口に含むと、甘い水がゆるやかに解け、涼しく咽を潤していく。
さすがに茫洋としてきていた意識が、ひとさしの水に凛と冴えた。
咥えたまま首をあげると、東の空を、小鳥の群が一散に飛んでくるのが目にはいった。
賑やかしく鳴き交わす声がみるみる近づいたとた思えば、あれよあれよという間に、目の前の樹冠に鈴なりになった。
鶸である。
明るい山吹色した羽根で軽く羽ばたいて梢に遊び、そこここで無心に餌を探している。
賑やかな朝餉の様子をぼんやり眺めていると、少し遅れてきた一羽が、雪の重みで垂れ下がる落葉松の枝へ降り立った。
さらに細い枝に飛び移ると、そこに逆さにつかまって揺れながら、小ぶりの松かさを啄ばんでいる。
一つ、ふたつ、つつく度に忙しく首を動かしては、ちるちると機嫌よい声をあげた。
つめたく尖った氷柱の先端を咥内で弄びながら、利吉は眩しく双眸を細める。
至極、器用なものである。
昨今、山城であれ、平城であれ、郭の内には、松が好んで植えられる。
松は成長がはやいうえ、有事の際はそれを逆茂木にしたり、究極には食料にすらして食いつなぐことができるからだという。
ところが忍び入る側とって、これは大変厄介なことである。
大抵、人の手で育てられた松は真直ぐ天に伸びる上、側枝は折れやすく、足がかりが少ない。
樹皮も葉も、ささくれてとても居心地がよいとは言えない。
しなやかな枝を大らかに拡げる稜の木や欅と違い、これほど潜むに難儀する樹種もないのである。
勿論、かつて氷ノ山の子天狗の名を欲しいままにした利吉には、木の葉隠れならば町育ちの忍なぞには決して劣らぬ自負があった。
それが、いつまで経っても拳ほどの大きさもない、小鳥の身のこなしに叶わぬのである。
**************
そんなに鶸が書きたいのか・・・そうかそうか・・・・
という感じのお話ですね。
もちろん、その通りです。
うーん。
読みにくくないか心配です。
但馬の国の戌亥には、因幡との国境を守るように、険しい山脈が連なっている。
利吉のふるさとである氷ノ山は、それらの中でも一際高く天空にせり出しており、山中から望む星々は、今宵も降り落ちそうな鮮明さで青白く瞬いていた。
その仄明りが、行く手の闇に積雪を白々と浮き上がらせ、反対に森の影を漆黒に塗り染める。
夜を通して帰路を急ぐ利吉にとり、天空の星々は闇に浮かんだ、只ひとつのの道しるべであった。
やがて地平からようようと明るむにつれ、くっきりと紫紺に浮かんでいたそれは、見上げるごとに輝きが褪せてゆき、ついに月白の空に解け消えた。
日の昇る気配は大気に満ち、風を呼ぶ。
雲ひとつない、快晴の朝である。
そしてそれは、新しい年の訪れでもあった。
しかし凍てついた山中に何の寿ぎも、それを交わす相手もあるでなし。
利吉は木立を縫って山腹へ至る小道―――もとは古い獣道であった―――を、澱みない足取りで登っていった。
修行に明け暮れた少年の頃、幾度となく登り下りした道である。
最後の難所に差し掛かり、勾配はいよいよ厳しくなってきた。
額にうっすらと汗を浮かべる利吉の頭上で、葉を落とした木々の梢は、明るい空へ手を伸べている。
さらさらと微かな音をたて、雪の零れたあたりをつい見やると、枝を漏れた光が、痛いほどに瞳をさした。
宵闇にどれほど馴染んだ利吉であろうと、眠らずに過ごした翌朝は五感がささくれる。
雪のした古木の根を足がかりに、急勾配を登りきったところで、利吉は不意に足を止めた。
途端、体中にたまった疲労がせきを切り、どっと背から圧し掛かる。
林間をなだらかに登りながらくねるこの一本道を一刻ほど辿れば、母待つ家が見えてくるだろう。
約束どおりに元旦を生家で迎えることは叶わなかったが、ようやくここまで帰ってきた安堵に、緊張の糸が柔らかくほどけていく。
利吉は静かに瞼を閉じ、透き通る天を仰いだ。
ゆっくりと腹から吐いた白い息は、中空にゆるゆるとたなびいて、やがて消えた。
古木に背を預け、雪だまりに脚を投げ出す。
熱をもった脛に、じわじわとしみる冷たさが心地よい。
利吉は暫くじっとしたあと、すいと茂みに手を伸ばして、手ごろな氷柱を折り取った。
口に含むと、甘い水がゆるやかに解け、涼しく咽を潤していく。
さすがに茫洋としてきていた意識が、ひとさしの水に凛と冴えた。
咥えたまま首をあげると、東の空を、小鳥の群が一散に飛んでくるのが目にはいった。
賑やかしく鳴き交わす声がみるみる近づいたとた思えば、あれよあれよという間に、目の前の樹冠に鈴なりになった。
鶸である。
明るい山吹色した羽根で軽く羽ばたいて梢に遊び、そこここで無心に餌を探している。
賑やかな朝餉の様子をぼんやり眺めていると、少し遅れてきた一羽が、雪の重みで垂れ下がる落葉松の枝へ降り立った。
さらに細い枝に飛び移ると、そこに逆さにつかまって揺れながら、小ぶりの松かさを啄ばんでいる。
一つ、ふたつ、つつく度に忙しく首を動かしては、ちるちると機嫌よい声をあげた。
つめたく尖った氷柱の先端を咥内で弄びながら、利吉は眩しく双眸を細める。
至極、器用なものである。
昨今、山城であれ、平城であれ、郭の内には、松が好んで植えられる。
松は成長がはやいうえ、有事の際はそれを逆茂木にしたり、究極には食料にすらして食いつなぐことができるからだという。
ところが忍び入る側とって、これは大変厄介なことである。
大抵、人の手で育てられた松は真直ぐ天に伸びる上、側枝は折れやすく、足がかりが少ない。
樹皮も葉も、ささくれてとても居心地がよいとは言えない。
しなやかな枝を大らかに拡げる稜の木や欅と違い、これほど潜むに難儀する樹種もないのである。
勿論、かつて氷ノ山の子天狗の名を欲しいままにした利吉には、木の葉隠れならば町育ちの忍なぞには決して劣らぬ自負があった。
それが、いつまで経っても拳ほどの大きさもない、小鳥の身のこなしに叶わぬのである。
**************
そんなに鶸が書きたいのか・・・そうかそうか・・・・
という感じのお話ですね。
もちろん、その通りです。
うむむ
2010年01月11日
もそもそ書いております。
出だしはこんな感じ・・・で・・・。
ああ、難しい。
久々すぎるせいなのでしょうか。
最近書いても書いても納得がいきません。
過去のものが目もあてられないというのもそうなのですが…。
きっと他の方の素敵な作品に触れることで、理想ばっかり高くなっているのです。
力不足を感じたり、上手くなりたかったりです。
「初春(はつはる)」
氷ノ山は、但馬の国の北西にあって、一際高く天空にせり出している。
山中から望む星々は今宵も、今にも降り落ちそうな鮮明さで青白く瞬いていた。
夜をこめて、帰路を急ぐ利吉にとり、それは混沌の闇に浮かんだ、只ひとつのの道しるべでもある。
やがて地平がようようと明るむにつれ、くっきりと紫紺に浮かんでいたそれは、見上げるごとに薄れてゆき、いつしか月白の空に解け消えた。
日の昇る気配に、風が、動き始める。
良く晴れて清清しい、真冬の朝。
そしてそれは、新しい年の訪れでもあった。
しかし凍てついた山中に何の寿ぎも、それを交わす相手もあるでなし。
利吉は黙々と木立を縫い、山腹を目指す小道―――もとは古い獣道であった―――を、澱みない足取りで登っていった。
**************
つづいたりなんだり。
まだタイトルは仮題です。
うーむ。だめだ。がんばろう。
これとは別の話で、最近創作に関して色々迷っていたことがあったのですが、やっぱり、私は自分の大事にしているものを大事にしていきたいなと思ったのです。
やっぱり、まだまだ新米のへたっぴいではあっても、創作をするということの根幹には頑固なほどまでの芯みたいなものがあって、そういうものを無理に捻じ曲げてはいけないんだと思うんです。
誰よりも自分のために。
うん。
それは誰しもそうだと思うんです。
大事にしよう。
出だしはこんな感じ・・・で・・・。
ああ、難しい。
久々すぎるせいなのでしょうか。
最近書いても書いても納得がいきません。
過去のものが目もあてられないというのもそうなのですが…。
きっと他の方の素敵な作品に触れることで、理想ばっかり高くなっているのです。
力不足を感じたり、上手くなりたかったりです。
「初春(はつはる)」
氷ノ山は、但馬の国の北西にあって、一際高く天空にせり出している。
山中から望む星々は今宵も、今にも降り落ちそうな鮮明さで青白く瞬いていた。
夜をこめて、帰路を急ぐ利吉にとり、それは混沌の闇に浮かんだ、只ひとつのの道しるべでもある。
やがて地平がようようと明るむにつれ、くっきりと紫紺に浮かんでいたそれは、見上げるごとに薄れてゆき、いつしか月白の空に解け消えた。
日の昇る気配に、風が、動き始める。
良く晴れて清清しい、真冬の朝。
そしてそれは、新しい年の訪れでもあった。
しかし凍てついた山中に何の寿ぎも、それを交わす相手もあるでなし。
利吉は黙々と木立を縫い、山腹を目指す小道―――もとは古い獣道であった―――を、澱みない足取りで登っていった。
**************
つづいたりなんだり。
まだタイトルは仮題です。
うーむ。だめだ。がんばろう。
これとは別の話で、最近創作に関して色々迷っていたことがあったのですが、やっぱり、私は自分の大事にしているものを大事にしていきたいなと思ったのです。
やっぱり、まだまだ新米のへたっぴいではあっても、創作をするということの根幹には頑固なほどまでの芯みたいなものがあって、そういうものを無理に捻じ曲げてはいけないんだと思うんです。
誰よりも自分のために。
うん。
それは誰しもそうだと思うんです。
大事にしよう。
お!
2010年01月09日
軽く調べ物をしていたら、テンションが上がってきました。
拙いながらも書けるかも・・・・!
利吉さんのなんでもない日常話です。
自分とかけ離れたキャラほど難しい!でも楽しい!実習やらなにやらの合間にがんばるよ!
拙いながらも書けるかも・・・・!
利吉さんのなんでもない日常話です。
自分とかけ離れたキャラほど難しい!でも楽しい!実習やらなにやらの合間にがんばるよ!